子どもの歯ぎしりは大丈夫?やめさせなくていい理由と相談すべきサイン

歯ぎしり・食いしばり

夜中に「ギリギリ」という音で目が覚めて、「うちの子、大丈夫かな」と心配になっていませんか。小さな体から出るとは思えない音なので、驚いてしまう保護者の方はとても多いです。

結論からお伝えすると、子どもの歯ぎしりのほとんどは一時的なもので、無理にやめさせる必要はありません。ただし、少ないながら相談したほうがいいサインもあります。

この記事では、現役歯科医師の立場から、子どもが歯ぎしりをする理由、いつまで続くのか、乳歯がすり減ったときの考え方、そして歯科医院に相談する目安をまとめました。大人の歯ぎしりについては歯ぎしりの原因とは?で解説しています。

子どもの歯ぎしりは大丈夫?結論から

夜の子ども部屋で眠る子どもと見守る保護者

子どもの歯ぎしりの多くは一時的なもので、そのまま様子を見てよいとされています。年齢とともになくなっていくことが多いためです。

多くは一時的で、様子を見てよいことがほとんど

歯ぎしりとは、食事や会話以外の場面で、上下の歯をこすり合わせたり強くかみしめたりする動きのことです。寝ている間に起こるものと、起きている間に起こるものがあり、子どもの場合に心配になるのはたいてい「寝ている間の音が出る歯ぎしり」です。

音が大きいと「歯が割れるのでは」と感じますが、音だけで歯への影響の程度は判断できません。静かな寝室では、こすれ合う音がとくに大きく響きます。確かめたいのは音そのものより、歯のすり減りや欠け、あごの痛みといった実際の変化のほうです。

それでも相談したいサインは3つ

日本小児歯科学会は、様子を見てよいとしたうえで、次の3つが見られる場合は小児歯科専門医への相談をすすめています。

  • 歯並びに問題がある
  • 歯が過度にすり減っている
  • あごを痛がる

この3つが見られなければ、多くの場合は急いで受診しなくても大丈夫です。判断の軸がはっきりしているので、まずはこの3つを覚えておいてください。

ただし、これは歯科での目安です。大きないびきをかく、眠っている間に呼吸が止まっているように見えるといった様子があるときは、歯ぎしりの有無にかかわらず小児科や耳鼻咽喉科に相談してください。

「やめさせる」必要がないのはなぜ?

歯ぎしりは無意識に起こるもので、本人の意思でやめられるものではないからです。寝ている間の歯ぎしりは脳の働きが関係していて、しつけや声かけでコントロールできる「行儀の悪い癖」ではありません。日本歯科医師会の解説でも、歯ぎしりを確実に止められる治療法は現時点でないとされています。

大人でも止められないものを、寝ている子どもに我慢させることはできません。「やめさせる」ではなく「困った変化が出ていないかを見ておく」という関わり方に切り替えてください。

しょう
しょう

歯ぎしりの音は、静かな寝室だと実際よりずっと大きく聞こえるものなんだ。ただ、音の大きさだけでは歯にどれくらい負担がかかっているかは分からない。だから見てほしいのは、音そのものより「歯の形が変わっていないか」なんだよ。

子どもはなぜ歯ぎしりをするの?

乳歯から生えかわり、永久歯へ変わる流れの図解

子どもの歯ぎしりの理由は一つではありません。日本小児歯科学会は、気持ちが満たされないストレスとして起きる場合と、かみ合わせの調整として見られる場合の2つを挙げています。

歯とあごの位置を合わせる動き

生えたばかりの歯は、上下がぴったり合っていません。上下の歯の接触は点から面へ移っていくため、そのすり合わせが必要になり、これは生理的な範囲の歯ぎしりと考えられています。かみ合わせが完成していない子どもで歯ぎしりの頻度が高いことも、日本歯科医師会の解説で述べられています。

乳歯が生えそろう時期や、永久歯に生えかわる時期は、歯が抜けたり新しい歯が伸びてきたりするたびに、かみ合わせの高さが少しずつ変わります。子どもの歯ぎしりの一部は、こうした「口が育っていく過程で起きている動き」だと考えられています。ここが大人の歯ぎしりと大きく違うところです。

なお、「かみ合わせの調整として起こる」ことと、「かみ合わせが悪いから歯ぎしりをする」ことは別の話です。日本歯科医師会の解説では、かみ合わせの異常が歯ぎしりの原因だとする考え方は否定されていると明記されています。歯並びが気になるからといって、歯ぎしりを止めるために矯正が必要になるわけではありません。

気持ちが満たされないストレス

ストレスが関係することもあります。気持ちが満たされないストレスとして歯ぎしりが起きている場合があるとされています。

ただし、ここで自分を責めないでください。ストレスとの関係を示す報告がある一方で、統計的な関係が見られなかったという報告もあり、すべての歯ぎしりがストレスによるものではないとされています。体質や睡眠など、複数の要因が重なって起こるものです。「歯ぎしり=愛情不足」ではありません。

大人の歯ぎしりとどう違う?

大人の歯ぎしりは、歯のすり減りや詰め物の破損といった「積み重なったダメージ」が問題になります。一方、子どもの歯ぎしりは成長の途中で一時的に見られることが多く、年齢とともに減っていきます。同じ「歯ぎしり」でも、見るべきポイントが違うのです。

子どもの歯ぎしりはいつまで続く?

年齢が上がるにつれて減っていくのが一般的です。ただし「何歳でなくなる」と言い切れる年齢はありません。

年齢が上がるほど少なくなっていく

寝ている間の歯ぎしりがどのくらいの割合で見られるかを、年代別にまとめると次のようになります。

年代申告調査で報告された割合
子ども10〜20%
大人約5〜8%
高齢者2〜3%
※歯ぎしりの音を本人や家族が申告した調査に基づく報告。年齢とともに減っていき、男女で大きな差はないとされています(出典:日本歯科医師会「テーマパーク8020」)

この調査では、寝ている間の歯ぎしりは大人より子どもに多い傾向が示されています。「うちの子だけ」ではありません。なお、調べ方によって割合は変わるため、この数字は目安として見てください。

「何歳で終わる」と言い切れない理由

「12歳ごろにおさまる」といった年齢をインターネットで見かけますが、確認した学会・公的機関の資料には、この年齢の根拠は見当たりませんでした。そのため、この記事では具体的な年齢は書きません。

確かなのは、日本小児歯科学会が「年齢とともになくなっていくことが多い」と説明していることです。生えかわりには個人差があるので、終わる時期にも幅があります。

歯ぎしりで乳歯がすり減っても大丈夫?

よく見られる乳歯のすり減りと、相談したい欠けの比較図

乳歯のすり減りは、すべてが問題というわけではありません。ただし「過度なすり減り」は相談の目安に入っています。

すり減りのすべてが問題ではない

乳歯は永久歯にくらべてエナメル質や象牙質が薄く、すり減りが目立ちやすい歯です。前歯の先が少し平らになっている程度であれば、それだけで異常とは限りません。

気をつけたいすり減り方

一方で、次のような変化があるときは一度見てもらってください。

  • 歯の先が明らかに平らになり、上下の前歯の形がそろってしまっている
  • 歯が欠けている、ギザギザに割れている
  • 冷たいものや甘いものでしみると言う
  • すり減った面の中央が、うっすら黄色や薄いピンクに見える

とくに最後の項目は注意が必要です。日本小児歯科学会の資料では、削れた歯の中央に見えるピンクの点は神経(歯髄)であり、しみて痛みが出ている場合はむし歯でなくても神経の治療が必要になることがあると説明されています。ただし、家庭から見える色だけで状態を判断することはできません。色の違いに気づいたら、自己判断せず歯科医院で見てもらってください。

酸っぱい飲食が多い子は削れやすい

すり減りには、歯ぎしり以外の要素も関わります。日本小児歯科学会は、酸味のある果物などを頻繁に大量に摂り、そこに歯ぎしりが加わると歯は削れていくと説明しています。実際の例として、みかんを1日4〜5個食べ、飲み物は炭酸飲料という生活が紹介されています。

対策として示されているのは、酸性の食品の摂り方に注意することと、そのあと水でよくうがいをすることです。歯ぎしりは止められなくても、こちらは今日から見直せます。

しょう
しょう

乳歯のすり減りで大事なのは、「減っているかどうか」より「どのくらいの速さで減ってきたか」なんだ。1回見ただけでは分からないから、定期検診で前の状態と見くらべられると判断しやすいんだよ。

どんなときに歯科医院へ相談する?

歯科医院に相談したい3つのサイン(歯のすり減り・あご・歯並び)

相談の目安は3つです。ここでは、家で確認しやすい形に整理しました。

受診の目安チェックリスト

確認すること見かたの例
歯が過度にすり減っていないか前歯の先が平らになる/欠ける/しみると言う
あごを痛がっていないか朝に「あごが疲れた」と言う/口を開けにくそう/かむと痛がる
歯並びやかみ合わせが気にならないか前歯がかみ合わない/片側だけ反対になっている
※相談の目安は日本小児歯科学会「こどもたちの口と歯の質問箱」をもとに作成。見かたの例は日常での確認しやすさを考えて補ったものです

どれも当てはまらず、音だけが気になるという場合は、次の定期検診のときに伝えれば大丈夫です。いびきや睡眠中の呼吸が気になる場合は、あわせて小児科や耳鼻咽喉科にも相談してください。

どこに相談すればいい?

まずは、通っているかかりつけの歯科医院で構いません。小児歯科専門医への相談がすすめられていますが、いきなり専門の医院を探さなくても、かかりつけで見てもらい、必要があれば紹介してもらう流れで大丈夫です。あごの強い痛みや、口が開けにくい状態が続く場合は、早めに相談してください。大人の顎関節症については顎関節症の症状・原因・治療で解説しています。

受診したら何をするの?

まずは口の中を見て、歯のすり減り方やかみ合わせ、あごの動きを確認します。すぐに何かの装置を入れるわけではありません。子どもの歯ぎしりは成長とともに変化するため、経過を追いながら判断していくのが基本です。「様子を見ましょう」と言われるだけに思えても、専門家が見て問題ないと確認できること自体に意味があります。

しょう
しょう

歯ぎしりの相談で歯科が見るのは、歯の先の形と、あごを動かしたときの様子だね。「今は様子を見ていい」とはっきりすること自体に意味があるんだ。

家でできることは?

保護者が仕上げ磨きをしながら子どもの前歯の先を見ている様子

家庭でできるのは、歯ぎしりを止めることではなく、環境を整えることと、口の中の変化に早く気づくことです。

無理にやめさせようとしなくていい

寝ている子どもを起こしたり、口を押さえたりする必要はありません。注意しても本人にはどうにもできず、睡眠を妨げるほうが負担になります。

寝る前の環境と生活リズムを整える

はじめにお伝えすると、ここで紹介する工夫は、歯ぎしりを減らす方法として確立されているものではありません。あくまで、子どもがよく眠れるようにするための一般的な工夫です。

寝る前は部屋を暗くし、テレビやタブレットの画面から離れる時間をつくります。日中に体を動かして遊ぶこと、寝る前に絵本を読んだり手を握ったりすることも、安心して眠りにつくうえで役立ちます。

仕上げ磨きのときに歯の先を見る

いちばん現実的なのは、毎日の仕上げ磨きのときに前歯の先を見る習慣です。明るい場所で子どもをあお向けに寝かせると、上の前歯の裏まで見えます。

仕上げ磨きのやり方や、いつまで続けるかの目安は仕上げ磨きはいつまで必要?にまとめています。使う歯磨き粉の選び方は子どもの歯磨き粉の選び方を参考にしてください。

予防のケアはこれまでどおり続ける

すり減りが深くなって内側の象牙質が出てくると、しみることがあります。歯ぎしりがあるからといって特別な予防が必要になるわけではありませんが、年齢に合ったフッ化物の利用と定期検診は、これまでどおり続けてください。

歯科医院で受けられる予防としては、フッ素の塗布や、奥歯の溝を埋めるシーラントがあります。それぞれの効果や費用はフッ素塗布は必要?シーラントの効果・費用・年齢の目安で解説しています。

子どももナイトガード(マウスピース)を使うの?

大人のナイトガードと、成長で変わる子どもの歯の対比図

子どものナイトガードは、大人と同じようには考えません。使うかどうかは、歯科医師が一人ひとりの状態を見て判断します。

大人のナイトガードとの違い

大人のナイトガードは、歯や詰め物・被せ物を守ることを主な目的として使われます。装置に歯ぎしりそのものを止める力は期待できませんが、歯や被せ物を保護できる利点があります。

一方、成長期の子どもは歯が生えかわり、あごも大きくなっていきます。口の中が変化していく時期なので、大人と同じ感覚で「歯ぎしりがあるからマウスピースを」とはなりません。

使う場合はどう判断される?

すり減りが強い場合など、装置を検討することはあります。ただし、その必要性やタイミングは、歯の状態、生えかわりの段階、本人が装着できるかどうかを見たうえで、歯科医師が個別に判断するものです。市販のマウスピースを保護者の判断で子どもに使わせることはおすすめしません。大人のナイトガードの内容は歯ぎしり用マウスピース(ナイトガード)で解説しています。

しょう
しょう

子どもにマウスピースを気軽にすすめないのは、口がどんどん変わっていくからなんだ。今ぴったりでも、歯が生えかわれば合わなくなる。合わない装置を無理に使うほうが心配だから、まずは経過を見るという考え方なんだよ。

よくある質問

Q. 歯ぎしりの音がすごいのですが、歯が割れませんか?
A. 音の大きさだけでは、歯にどれくらい負担がかかっているかは判断できません。乳歯は少しずつすり減ることがありますが、音が大きいから割れると決まっているわけではありません。歯の先が欠けている、しみると言う場合は歯科医院で見てもらってください。

Q. 昼間もギリギリと音を立てています。夜と違いますか?
A. 起きている間の歯ぎしりは、寝ている間のものとは分けて考えられています。寝ている間のものは脳の働きが関係する一方、起きている間のものは身についた癖と考えられており、意識して見直せる場合があります。日中に頻繁であれば、検診のときに伝えてみてください。

Q. ストレスが原因と聞きました。育て方の問題でしょうか?
A. 育て方の問題ではありません。気持ちが満たされないストレスとして起こる場合があるとされていますが、すべての歯ぎしりがストレスによるものではないことも示されています。体質や睡眠など、複数の要因が重なって起こります。

Q. 何歳になっても続いていたら異常ですか?
A. 年齢だけで異常かどうかは決まりません。判断の目安になるのは、歯が過度にすり減っていないか、あごを痛がっていないか、歯並びに問題がないかの3点です。大人になっても続く場合は、大人の歯ぎしりとして対応を考えます。

Q. 3歳児健診では何も言われませんでした。放っておいていいですか?
A. 健診で指摘がなく、上の3つのサインもなければ、次の定期検診まで様子を見て構いません。気になったことを検診でそのつど伝えておくと、変化を追いやすくなります。

Q. いびきや口呼吸もあります。関係ありますか?
A. 睡眠中の呼吸の問題と歯ぎしりには関連が報告されていますが、どちらかが原因だと確立しているわけではありません。いびきが大きい、眠っている間に呼吸が止まっているように見える場合は、歯ぎしりの有無にかかわらず小児科や耳鼻咽喉科に相談してください。子どもの場合、扁桃やアデノイドの大きさが関係していることがあります。

まとめ

保護者と歯科医師が向かい合って話している様子

子どもの歯ぎしりは、その多くが一時的なもので、年齢とともに減っていきます。上下の歯の位置を合わせるための動きとして起こることもあり、無理にやめさせる必要はありません。

覚えておいていただきたいのは、相談の目安になる3つのサインです。歯が過度にすり減っている、あごを痛がる、歯並びに問題がある。この3つがなければ、音が気になっても次の検診で伝えれば大丈夫です。いびきや睡眠中の呼吸が気になるときは、小児科や耳鼻咽喉科に相談してください。

家でできることは、歯ぎしりを止めることではなく、仕上げ磨きのときに歯の先を見ておくことです。気になる変化に気づいたら、かかりつけの歯科医院で相談してください。

参考文献・出典

歯ぎしり・食いしばり
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この記事を書いた人
しょう

現役歯科医師(臨床経験10年以上)。むし歯・歯周病の治療から、ジルコニア・セラミックなど自費の補綴治療まで幅広く診療しています。「もっと早く知っていれば」を減らせるよう、診療室で患者さんに話すような内容を、臨床経験と公的機関・学会の情報をもとにわかりやすく発信しています。

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