「ダイソンが歯ブラシを出したらしい。しかもカメラ付きで約8万円」——そんなニュースを見て、気になっている方も多いのではないでしょうか。
先にお伝えすると、自分はこの歯ブラシを使っていませんし、買う予定もありません。それでも現役の歯科医師として公式サイトの注釈まで読むと、「面白い発想だな」と感じる道具でした。
この記事では、仕組み・買う前の注意点・「フロスの代わりになるのか」を整理します。水流の道具全般はジェットウォッシャーはフロスの代わりになる?で解説しています。
※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。
ダイソンの歯ブラシ「CameraJet」とは?

Dyson CameraJet(ダイソン カメラジェット)とは、ブラシの近くに付いた小さなカメラで歯と歯のすき間を見つけ、そこへ自動でジェットを噴射する電動歯ブラシのことです。2026年9月1日に日本でも発売されました。
一言でいうと「カメラで歯間を見つけて、ジェットで狙う歯ブラシ」
これまでも「電動歯ブラシ」と「口腔洗浄器(水流で洗う道具)」はそれぞれ別の商品としてありました。CameraJetは、この2つを1本にまとめたうえで、「どこに噴射するか」をカメラと画像認識に任せたのが新しいところです。
みがきながら歯間に差しかかると、自動でジェットが出ます。使う人が自分で歯間を狙う必要がない、という設計です。
価格・発売日・サイズなど基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 価格 | 79,800円(税込・公式ストア) |
| 発売日 | 2026年9月1日(公式ストア・主要通販) |
| 本体サイズ・重さ | 273×44×44mm/230g(ブラシ1本を含む) |
| タンク容量 | 12.5mL |
| 充電 | 約8時間で満充電/1回の充電で14回のクリーニング |
| モード | オートジェット+ブラシ/オートジェットのみ/ブラシのみ |
| ブラシの強さ | センシティブ/デイリークリーン/ディープクリーンの3段階 |
| 同梱物 | ブラシヘッド2本、給水機能付き充電ドック、ドックケース、USB-C充電ケーブル |
これまでの電動歯ブラシと何が違うの?

いちばんの違いは、歯ブラシが「口の中を見ている」ことです。特徴を4つに分けて紹介します。
① 小さなカメラが毎秒28枚を見ている
10万ピクセルのマクロレンズカメラが、みがいている最中の歯を毎秒28枚のペースで撮影し、リアルタイムで解析します。画像認識は47万枚以上の歯の画像で学習させたと説明されています。
② 歯間を見つけたら0.1秒以内にジェットが出る
歯と歯のすき間を検出すると、0.1秒以内にジェットが噴射されます。ダイソンはこの仕組みを「Gap Optical Targeting(ギャップ オプティカル ターゲティング)」と呼んでいます。
③ ジェットは「まっすぐ」ではなく円錐状に広がる
一般的な口腔洗浄器の水流は、針のように細くまっすぐです。CameraJetは円錐状に広がる「コニカルジェット」を採用しています。シンガポール国立大学の歯学部と共同で人工の歯垢(プラーク/細菌のかたまり)を開発し、それを使って試験したそうです。
④ スマホのアプリで口の中のライブ映像が見られる
専用アプリとつなぐと、みがいている最中の映像をスマホで確認できます。どこをみがけたかのマップ表示や、過去のケアを振り返るレポートも用意されています。
歯科医師として「面白い」と思ったところは?
いちばん面白いのは、汚れの落ち方そのものより「自分の口の中を毎日見られること」だと感じました。
自分の口の中を、見たことがありますか?
自分の口の中をじっくり見たことがある方は、実はとても少ないです。診療室で鏡や口の中の写真をお見せすると、「自分の歯って、こんなふうになっていたんですね」と驚かれる方がたくさんいます。
毎日みがいている場所なのに、見えているのは前歯くらい。奥歯の裏側や歯と歯ぐきの境目は、ほとんどの方が見たことのない場所です。
CameraJetは、そこをみがきながらスマホで映せます。「ここに毛先が当たっていなかったんだ」と自分で気づけるのは、道具としてかなり新しいところだと思います。
見えると、みがき方は変わりやすい
歯科医院でみがき方の説明を受けても、家に帰ると元のみがき方に戻ってしまうことがあります。自分の目で見た場所は、記憶に残りやすいからです。
ただし、映像を見て病気かどうかを判断するのは難しいものです。気になるところが見つかったら、歯科医院で相談するのが確実です。
もう一つの面白さは「手間を機械にまかせた」こと
歯と歯の間のケアは、大切だと分かっていても続かない方が多いです。続かない理由はいろいろありますが、その一つが手間の多さです。
CameraJetは「歯みがきをしていれば、歯間のケアも勝手に終わる」状態を目指しています。道具の性能を上げるのではなく、人の手間を減らす方向から攻めているのもダイソンらしいところです。

診療室で口の中の写真をお見せすると、「えっ、これが自分の歯ですか」と驚く人が本当に多いんだ。毎日みがいている場所なのに、意外と見たことがないんだよね。自分は使っていないけれど、毎日それを見られるのは面白いと思うな。
ダイソンの歯ブラシはフロスの代わりになる?

結論からお伝えすると、糸のフロスをやめてCameraJetに置き換えてよい、と言えるだけの材料はまだそろっていません。発売されたばかりで、自分が確認できた範囲では、公表されているのはメーカー自身による試験です(2026年9月時点)。
公式サイトの「フロス」は、糸のフロスとは別のもの
公式サイトには「ブラッシングしながら歯間を的確にフロスし」という表現が出てきます。ここでの「フロス」は、ジェットで歯間を洗うことを指しています。糸を通してこすり取る、いわゆるデンタルフロスとは別のものです。
水流は「洗い流す」道具、糸のフロスは「歯の面に沿わせてこすり取る」道具です。口腔洗浄器の研究をまとめた報告でも、フロスを置き換えてよいと言えるほどの証拠は今のところ示されていません。
矯正中は「ブラシのみモード+手でフロス」と公式に書かれている
公式サイトのよくある質問には、歯列矯正中の方はブラッシングのみのモードで使い、そのあと手動でのフロスで歯間をきれいにするよう書かれています。あわせて、矯正歯科医の指示に従うことも案内されています。
つまりメーカー自身も、「これ1本ですべての人の歯間ケアが完結する」とは説明していません。

ここでの「フロス」は、ジェットで歯間を洗うことを指しているんだ。糸のフロスとは別物、と思って読むと誤解しにくいかな。「足すもの」であって「代わり」ではない、と考えておくのがよさそうだね。
あらためて、フロスはなぜ大切?

フロスが大切な理由は、歯ブラシの毛先が歯と歯の間には届きにくいからです。どんなに高価な歯ブラシでも、ここは変わりません。
歯ブラシだけでは、歯と歯の間は十分に清掃しにくい
歯垢は、歯の表面にへばりついた膜のような汚れです。食べかすのように浮いているわけではないので、こすり取らないと落ちにくい性質があります。
歯と歯が接しているところには、歯ブラシの毛先が入りません。そのため、歯間の清掃にはデンタルフロスや歯間ブラシといった補助の道具が必要になります。
| 道具 | はたらき方 | 得意なところ |
|---|---|---|
| 歯ブラシ(手みがき・電動) | 毛先でこする | 歯の表・裏・かみ合わせの面 |
| デンタルフロス | 糸を歯の面に沿わせてこすり取る | 歯と歯が接しているせまいすき間 |
| 歯間ブラシ | 小さなブラシでこすり取る | すき間が広めの歯と歯の間 |
| 水流(ジェット) | 洗い流す | 食べかす、届きにくい場所のすすぎ |
フロスは「歯ブラシの前」に通すのがおすすめ
当サイトでは、ケアの順番を「フロス・歯間ブラシ → 歯ブラシ → 洗口液」でおすすめしています。先に歯間の汚れをかき出しておくと、そのあとの歯みがきで洗い流しやすくなるためです。
使い方に自信がない方は失敗しないデンタルフロスの使い方を、どれを買うか迷う方はデンタルフロスの選び方を参考にしてください。自分が毎日使っているのはフロアフロスです。

自分はフロアフロスを夜に1回だけ、歯ブラシの前に通しているよ。毎食後じゃなくていいんだ。高い歯ブラシを考える前に、まずはフロスを1つ試してみるのもいいと思うな。
買う前に知っておきたい5つのこと

CameraJetには、注釈やよくある質問まで読まないと気づきにくい条件がいくつかあります。購入を考えている方は、次の5つを先に確認しておくと安心です。
① 歯磨き粉は「泡立たないタイプ」がすすめられている
公式サイトでは、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム/泡立ちのための成分)を含まないジェルタイプか、泡立たないタイプの歯磨き粉がすすめられています。泡が多いとカメラの視界がさえぎられ、歯間を見つけにくくなるためです。
泡立ちすぎたときは、そのつど吐き出してカメラの視界を確保するよう案内されています。使用が禁止されているわけではありませんが、いま使っている歯磨き粉がそのまま合うとは限らない点は知っておきたいところです。
② ジェットで出すのは「マウスウォッシュ」が想定されている
ジェットから噴射するのは、水ではなくマウスウォッシュ(洗口液)とされています。組み合わせるものとしては、透明で泡立ちの少ないタイプがすすめられています。
海外ではダイソン製の歯磨き粉とマウスリンスがセットで展開されていますが、どちらも2026年9月時点で日本では発売されていません。
③ 「最大69%多く除去」はラボ試験の数字
公式サイトには「主要な電動歯ブラシと比較して最大69%多くの歯垢を除去」とあります。注釈を読むと、これはブラッシングのみのモードで行ったラボ試験(実験室での試験)の結果です。
| 公表されている数字 | 注釈に書かれている条件 |
|---|---|
| 主要な電動歯ブラシより最大69%多く歯垢を除去 | ブラッシングのみのデイリークリーンモード/ラボ試験/比較相手は市場価格200米ドル以上の主要な競合製品 |
| 歯ぐきの状態に関する臨床試験の数字 | 71名・1日2回・4週間/ダイソン製の歯磨き粉とマウスリンス(日本未発売)を併用/比較相手はダイソン製歯磨き粉を使った手みがき |
実験室の数字が、そのまま自分の口の中で再現されるとは限りません。公表データを読むときは、ブラシ単独の試験と、歯磨き粉・洗口液を併用した試験を分けて確認する必要があります。
④ 臨床試験は、日本未発売の製品とセットの条件で行われている
人を対象にした試験は、ダイソン製の歯磨き粉とマウスリンスを併用した条件で行われています。どちらも日本ではまだ買えないため、日本で同じ条件をそろえることは今のところできません。
これは製品が悪いという話ではなく、「公表されている数字をそのまま期待しないほうがいい」という読み方の話です。
⑤ 歯周病や治療中の方は、使う前に歯科医院で相談を
公式サイトには、歯周病の方、歯科治療を継続中の方、お口に気になることがある方は、使用前に歯科の専門家に相談するよう書かれています。
ブラシの毛はソフトからミディアムのかたさで、さらにやわらかいソフトタイプの替えブラシも用意されています。歯ぐきの状態は人によって違うので、迷ったらかかりつけの歯科医院で聞いてみてください。
カメラで口の中を撮るのは大丈夫?
公式の説明では、カメラの映像は保存もアップロードもされません。気になる方のために、書かれている内容を整理します。
公式の説明:映像はクラウドに保存されない
- カメラは機能が必要なときだけ動き、使っていないときはオフになる
- カメラが動いているときは白色のライトが点灯する
- ライブ映像はアプリへ直接送られ、ダイソンやアプリに保存されたり、クラウドにアップロードされたりしない
- ダイソンや第三者がライブ映像にアクセスすることはない
病気を診断してくれる機械ではない
アプリの機能として紹介されているのは、ライブ映像・みがけた範囲のマップ・ケアのレポートです。虫歯や歯周病を判定する機能は書かれていません。
「カメラ付き」と聞くと診断までしてくれそうに感じますが、あくまで歯間を見つけるためのカメラです。お口のチェックは、これまでどおり歯科医院の定期検診で受けてください。
どんな人に刺さりそう?いまの道具で十分な人は?
CameraJetは「必要な人」より「ワクワクする人」に向いた道具だと感じます。
刺さりそうな人
- 新しいガジェットや家電が好きで、仕組みそのものを楽しめる人
- 歯間のケアが続かず、「手間を減らせるなら投資したい」と思う人
- アプリで記録が残るとやる気が出るタイプの人
- 洗面所に置く道具を1本にまとめたい人
いまの道具で十分な人
- すでに歯ブラシとフロスの習慣ができている人
- 歯磨き粉にこだわりがあり、変えたくない人
- 使ったあとの洗浄・乾燥といったお手入れが負担に感じる人
自分自身は後者です。朝は電動歯ブラシ、夜は手みがきという今の習慣が気に入っているので、いまのところ買う予定はありません。電動歯ブラシをこれから選ぶ方は電動歯ブラシの選び方もあわせてご覧ください。
なお、2026年9月時点では、通販の発送まで時間がかかる場合があります。急いで手に入れたい方は、在庫の状況をよく確認してから注文してください。

道具にワクワクできると、ケアが続くきっかけになる人もいると思うんだ。ガジェット好きの人が「これなら毎日みがきたい」と思えるなら、それは十分な理由になるよね。そのうえで、糸のフロスも続けてもらえたらうれしいな。
よくある質問(FAQ)
Q. 普通の歯磨き粉は使えますか?
A. SLSを含まないジェルタイプか、泡立たないタイプの歯磨き粉がすすめられています。泡が多いとカメラが歯間を見つけにくくなるためです。泡立ちすぎた場合は、そのつど吐き出すよう案内されています。
Q. ジェットには水を入れてもいいですか?
A. 公式サイトの製品ページでは、透明で泡立ちの少ないマウスウォッシュと組み合わせることがすすめられています。水だけで使った場合の説明は、製品ページでは確認できませんでした。購入前に取扱説明書やお客様相談室で確認するのが確実です。
Q. これを買えば、糸のフロスはやめていいですか?
A. 置き換えてよいと言えるだけの材料は、まだそろっていません。ジェットは「洗い流す」、糸のフロスは「こすり取る」とはたらき方が違います。使う場合も、フロスに足すものと考えるのがおすすめです。
Q. 矯正中でも使えますか?
A. 公式サイトでは、矯正中はブラッシングのみのモードで使い、そのあと手動のフロスで歯間をきれいにするよう案内されています。装置の種類によって合う道具が変わるので、担当の矯正歯科医に確認してください。
Q. カメラで虫歯や歯周病を見つけてくれますか?
A. 公式サイトに、病気を判定する機能は書かれていません。カメラは歯間を見つけるためのものです。
まとめ

- Dyson CameraJetは、カメラで歯間を見つけてジェットで狙う、新しいタイプの電動歯ブラシ(79,800円・2026年9月発売)
- いちばんの価値は、毎日みがきながら自分の口の中を見られること
- すすめられる歯磨き粉のタイプがあり、ジェットにはマウスウォッシュが想定されている
- 公表されている数字は、ラボ試験や日本未発売の製品を併用した条件つきのもの
- 糸のフロスの代わりになるとは、まだ言えない。歯間のケアは「歯ブラシの前に1日1回」から
新しい道具が出てくるのは、歯科医師としてもうれしいことです。ガジェットとして楽しめる方には、きっと刺さる1本だと思います。そのうえで、歯と歯の間はフロスや歯間ブラシでこすり取る、という基本もぜひ続けてみてください。すき間の広さによって合う道具が変わるので、迷ったらかかりつけの歯科医院で相談してから選ぶと安心です。
参考文献・出典
- ダイソン公式サイト|Dyson CameraJet 電動歯ブラシ(製品ページ・よくあるご質問・注釈)
- ダイソン株式会社 プレスリリース|Dyson CameraJet が新カテゴリーとして登場
- 厚生労働省 e-ヘルスネット|歯間部清掃(デンタルフロス・歯間ブラシ)
- Worthington HV, et al. Home use of interdental cleaning devices, in addition to toothbrushing, for preventing and controlling periodontal diseases and dental caries. Cochrane Database of Systematic Reviews 2019


コメント