歯は、失えば失うほど食事がしづらくなり、生活の質(QOL)が少しずつ下がっていきます。できることなら、自分の歯で一生おいしくご飯を食べたい——そう思う方は多いはずです。
結論から言うと、歯を失う一番の原因は歯周病で、次いで虫歯です。そしてこの2つは、毎日のケアと定期検診によってリスクを下げることができます。この記事では、8020推進財団の調査データをもとに「歯を失う原因」と、現役歯科医師の自分が現場で大切だと感じている「今日からできる3つの対策」をやさしく解説します。
歯を失って後悔している方を、自分はたくさん見てきました。この記事が、その後悔を1人でも減らすきっかけになればうれしいです。
歯を失う一番の原因は?【データで見る抜歯の理由】

歯を失う(抜歯する)最も多い原因は歯周病で、次いで虫歯です。8020推進財団が全国の歯科医院を対象に行った調査では、永久歯を抜いた主な原因は次の割合でした。
| 抜歯の主な原因 | 割合 |
|---|---|
| 歯周病 | 37.1% |
| むし歯(う蝕) | 29.2% |
| 破折(歯が割れる・折れる) | 17.8% |
| その他 | 7.6% |
| 埋伏歯(親知らずなど) | 5.0% |
| 矯正 | 1.9% |
| 不明 | 1.4% |
つまり、歯周病と虫歯を合わせると66.3%、抜歯の原因の約3分の2を占めます。それぞれ、簡単に説明します。
- 歯周病:歯周病菌による炎症が続くことで、歯ぐきや歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ破壊される病気。進むと歯がぐらついて抜けます。
- むし歯(虫歯):プラーク(歯垢/細菌のかたまり)の中の細菌が酸を作り、歯が溶けていく病気。神経まで進行すると、治療が複雑になり、状態によっては歯を残しにくくなることがあります。
- 破折:歯が割れたり折れたりすること。とくに神経を取った歯や、大きく削られて歯質が少なくなった歯は、条件によって割れるリスクが高くなります。

毎日診療していても、歯を抜く一番の理由が歯周病、というのは本当に実感するね。しかも歯周病も虫歯も、初期は痛みが出にくい。気づいたときには進んでいることが多いんだ。
歯を失わないためにできること【3つ】
歯を失う原因のうち、歯周病や虫歯は、日々のケアと定期管理でリスクを下げることができます。むずかしいことは必要ありません。現役歯科医師の自分が、現場で本当に大切だと感じている3つを紹介します。
① 毎日のセルフケア(プラークコントロール)が最重要

歯を失わないための土台は、毎日プラーク(歯垢)をどれだけ落とせるか=プラークコントロールです。歯周病も虫歯も、原因はこのプラークだからです。
ポイントは、歯ブラシだけに頼らないこと。歯と歯の間は歯ブラシが届きにくいので、デンタルフロスや歯間ブラシを組み合わせます。どんなに良い治療をしても、プラークコントロールができなければ歯を失うリスクは高いままです。自分に合った道具や磨き方は、歯科医院で一度教わるのが近道です。
道具選びは歯ブラシの選び方とデンタルフロスの選び方で、自分が実際に毎日使っている道具は歯科医師の愛用オーラルケア用品まとめで紹介しています。

「そんなの当たり前」と思った人も多いよね。でも、その当たり前が毎日きちんとできている人は意外と少ない。自分も完璧じゃない。だからこそ、続けやすいやり方を見つけるのが大事なんだ。
② 定期検診でプロのケアを続ける

セルフケアだけでは落としきれない汚れや、自分では気づけない初期の変化を補うのが定期検診です。歯周病も虫歯も初期は自覚症状が少なく、痛みが出たときには進行していることが多いからです。
歯科医院では、歯石の除去や、磨き残しのチェック、初期の虫歯・歯周病の早期発見ができます。通う間隔は3〜6か月が一つの目安として説明されることが多いですが、実際には虫歯や歯周病のリスク、清掃状態、被せ物の数、全身状態によって変わります。自己判断せず、歯科医院でリスクに合わせて相談しましょう。定期検診で何をするかは歯科検診の内容と頻度で詳しく解説しています。
③ 治したあとを「長持ちさせる」意識を持つ
治療して終わり、ではありません。治した歯も、再び虫歯や歯周病になれば失うリスクが高まります。とくに、詰め物や被せ物のふちに段差やすき間があると、そこにプラークがたまって二次虫歯(治療した歯が再び虫歯になること)が起こりやすくなります。
大切なのは、段差なく清掃しやすい状態で治すことと、治したあともメンテナンスを続けることです。これは保険か自費かという材料の違いだけで決まるものではなく、適合(ぴったり合っているか)・清掃性・噛み合わせ・その後の管理を総合的に見て決まります。見た目や精度を重視して自費を選ぶことも選択肢の一つですが、どんな治療でも、その後の手入れ次第で寿命は変わります。虫歯や被せ物の考え方は虫歯の原因と進行、保険と自費の違いは保険と自費、どっちを選ぶ?で解説しています。
臨床でも、「昔治した歯のふちから虫歯が再発していた」「神経を取った奥歯が割れて抜歯になった」というケースをよく見ます。これは材料だけの問題ではなく、歯の残り方・被せ物の適合・噛み合わせ・清掃状態・メンテナンスの有無が重なって起こります。だからこそ、治療したあとこそ、歯科医院で状態を確認し続けることが大切だと感じています。

治療はゴールじゃなくてスタートなんだ。せっかく治した歯も、汚れがたまれば同じことのくり返しになる。だから「治したあとをどう保つか」を、いつも患者さんと一緒に考えているよ。
歯を失う前に気づきたいサインは?

歯周病も虫歯も、初期は痛みなどの自覚症状が出にくいのが厄介な点です。「痛くないから大丈夫」と思っているうちに進行し、気づいたときには歯を残しにくい状態になっていることがあります。それでも、次のような変化は早めに気づきたいサインです。
- 歯みがきのときに歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが赤く腫れる、または下がってきた
- 口臭が気になる、朝起きたときに口の中がねばつく
- 冷たいものや甘いものがしみる
- 歯が浮いた感じがする、噛むと違和感がある
- 歯がぐらつく(かなり進行しているサイン)
ただし、こうしたサインが出る前から進んでいることも多いため、症状がなくても①毎日のセルフケア②定期検診③治したあとの維持、の3つを続けることが、将来歯を失うリスクを下げることにつながります。歯周病について詳しくは歯周病とはをご覧ください。
歯を失うリスクが高い人の特徴【チェックリスト】
次の項目に当てはまるほど、歯を失うリスクは高めです。心当たりがある方は、早めに歯科医院で相談しておくと安心です。
- 歯みがきのときに歯ぐきから血が出ることがある
- 歯石を長い間取っていない
- フロスや歯間ブラシを使っていない
- 神経を取った歯や、大きな被せ物が多い
- 歯ぎしり・食いしばりを指摘されたことがある
- たばこを吸う
- 糖尿病など全身の病気がある
とくに歯ぎしりや食いしばりが強い方は、歯や被せ物に大きな力がかかり、破折(抜歯原因の3位)につながることがあります。心当たりがある方は、歯ぎしりの原因や、対策としてのナイトガード(マウスピース)もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 歯を失う一番の原因は何ですか?
A. 歯周病です。8020推進財団の調査では、永久歯を抜いた原因の最も多い割合が歯周病(37.1%)、次いでむし歯(29.2%)でした。この2つで抜歯原因の約3分の2を占めます。
Q. 歯周病は自分で気づけますか?
A. 初期は自覚症状が少なく、気づきにくい病気です。歯ぐきからの出血、腫れ、口臭、歯が浮く感じなどはサインになりますが、症状がなくても、定期検診で歯周ポケット検査やレントゲン検査などを受けることで、状態を把握しやすくなります。
Q. 何歳から気をつければいいですか?
A. 年齢にかかわらず、早い時期からセルフケアと定期管理を習慣にすることが大切です。調査では、歯周病や破折で歯を失う割合は35歳以降で年齢とともに高くなる傾向がありました。若いうちからのセルフケアと定期検診が、将来の歯の残り方に影響します。
Q. 定期検診はどのくらいの頻度で行けばいいですか?
A. 3〜6か月が一つの目安ですが、虫歯や歯周病のリスク・清掃状態・被せ物の数によって変わります。自己判断せず、歯科医院で自分に合った間隔を相談しましょう。
Q. 一度失った歯は元に戻りますか?
A. 自然に元へ戻ることはありません。失った部分は入れ歯・ブリッジ・インプラントなどで補う必要があります。だからこそ、失う前の予防がいちばん大切です。
Q. 歯が抜ける前兆はありますか?
A. 歯ぐきからの出血・腫れ・口臭・歯が浮く感じ・ぐらつきなどはサインになります。ただし、こうした前兆が出る前から進行していることも多いので、症状がなくても定期検診で確認しておくのがおすすめです。
Q. 歯ぎしりや食いしばりで歯を失うことはありますか?
A. それ自体がすぐに歯を失う原因になるわけではありませんが、強い力が続くと歯や被せ物の破折につながることがあります。破折は抜歯原因の3位です。指摘されたことがある方は、ナイトガード(マウスピース)などの対策を歯科医院で相談しましょう。
まとめ

歯を失う一番の原因は歯周病、次いで虫歯で、この2つで抜歯原因の約3分の2を占めます。そして歯周病や虫歯は、毎日のケアと定期管理でリスクを下げられます。歯を失わないために今日からできるのは、次の3つです。
- ① 毎日のセルフケア(歯ブラシ+フロス・歯間ブラシでプラークコントロール)
- ② 定期検診でプロのケアと早期発見を続ける
- ③ 治したあとを長持ちさせる(清掃しやすい状態で治し、メンテナンスを続ける)
どれも特別なことではありません。痛くなってから通うのではなく、痛くないうちから続けることが、10年後・20年後の「自分の歯でおいしく食べられる毎日」につながります。まずは定期検診で、いまのお口の状態を知るところから始めてみてください。
参考文献・出典
- 【公的機関】8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査」(2018年)
- 【公的機関】厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病の予防と治療」
- 【公的機関】日本歯科医師会「テーマパーク8020」



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