噛むと歯が痛い|虫歯じゃないのに痛む原因と対処法

症状・お悩み

「噛んだときだけ、歯がズキッと痛む」「歯医者では虫歯じゃないと言われたのに、噛むと痛い」——そんな不安を抱えていませんか。噛むと痛い症状は、じつは虫歯以外にもさまざまな原因で起こります。

症状の特徴を知ることで、受診を急ぐべきサインに気づきやすくなります。この記事では、現役歯科医師である自分が、噛むと痛いときに考えられる原因を整理し、痛み方から考えられる原因の目安・今すぐできる対処法・受診の目安まで、やさしく解説します。気になる原因からは、より詳しい記事(虫歯の原因や進行食いしばりの原因など)にも進めるようにしています。

噛むと痛いのはなぜ?まず知ってほしいこと

結論から言うと、噛むと痛い原因は一つではありません。噛んだときの痛みでは、歯を支える「歯根膜(しこんまく)」や歯の根の周囲に炎症が起きていることがあります。ただし、歯の神経(歯髄)の炎症や歯のひびなど、別の原因で痛むケースもあります。

歯根膜とは、歯の根と、それを支える骨の間にある薄いクッションのような組織のことです。噛む力を受け止めるセンサーの役割をしていて、ここに炎症が起きると、噛んだときだけ痛みを感じやすくなります。

噛んだときだけ歯が痛む場合は、虫歯だけでなく、歯の根の周囲の炎症、噛み合わせの負担、歯周病、歯のひび、詰め物・被せ物の不具合などが考えられます。痛み方だけで確定診断はできないため、歯の神経の検査・打診・噛み合わせの確認・歯周検査・レントゲン検査などを組み合わせて原因を判断します。

しょう
しょう

「虫歯じゃないのに噛むと痛い」って人、けっこう来院するんだ。噛むと痛いときは、虫歯だけじゃなくて、歯を支える歯根膜や歯の根の周りに負担や炎症が起きていることもある。だから「虫歯がない=問題なし」とは限らないんだよ。

噛むと痛いときに考えられる主な原因7つ

噛むと痛いときに考えられる代表的な原因を、7つに整理しました。当てはまりそうなものから読んでみてください。

1. 虫歯が神経に近づいている

虫歯が深く進むと、噛んだときに響くような痛みが出ます。虫歯の穴に食べ物が入り込むと、神経(歯髄)を刺激して痛むこともあります。

冷たいものにしみる症状に加えて、噛んだときの痛みが出てきた場合は、虫歯が深くなっている可能性もあります。ただし、症状だけでは虫歯の深さや神経の状態は判断できません。虫歯の原因や進み方については虫歯とはの記事で解説しています。

2. 歯の根の先に炎症がある(根尖性歯周炎)

歯の根の先や周りに炎症が起きると、「噛むと痛い」「歯が浮いた感じがする」という症状が出ます。これを根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と呼びます。

根尖性歯周炎とは、歯の根の先にある組織に炎症が起きた状態です。深い虫歯による歯の神経の感染・壊死のほか、過去に根管治療を受けた歯の再感染、外傷、歯のひびなどが関係することもあります。ドクドクと脈打つような痛みや、歯ぐきの腫れをともなうこともあります。

原因が根の中(根管)の感染にある場合は、根管治療や再根管治療(歯の根の中の掃除)が必要になることがあります。詳しくは神経を取る治療・根管治療の記事もあわせてご覧ください。

3. 歯ぎしり・食いしばりの負担

睡眠中の歯ぎしりや、日中の食いしばりは、歯に強い力を繰り返しかけます。その負担で歯根膜が炎症を起こし、噛むと痛い・歯が浮くといった症状につながることがあります。

朝起きたときに顎がだるい、歯の一部が平らにすり減っている、といった心当たりがあれば、歯ぎしり・食いしばりが関係しているかもしれません。詳しくは食いしばりの原因の記事ナイトガードの記事で解説しています。

しょう
しょう

食いしばりって、本人はほとんど自覚がないんだ。「ストレスないですよ」って人でも、集中してるときに無意識でグッと噛んでることが多い。噛むと痛い歯が特定の1本なら、その歯に負担が集中してるサインだったりするよ。

4. 歯周病で歯が浮く・ぐらつく

歯周病が進むと、歯を支える骨が減り、噛んだときに痛みやぐらつきを感じることがあります。

歯周病は、プラーク(歯垢/細菌のかたまり)中の細菌によって歯ぐきに炎症が起こり、進行すると歯を支える骨などの歯周組織が破壊される病気です。歯ぐきの腫れ・出血、歯が浮く感じをともなうのが特徴です。気になる方は歯周病の初期症状の記事もチェックしてみてください。

5. 歯のひび・破折

歯にひびが入っていると、噛んだときの特定の角度で鋭い痛みが走ることがあります。とくに、硬いものを噛んだときや、噛んだ力を抜いた瞬間に鋭く痛むことがあります。

ひびは見た目では分かりにくく、レントゲンだけでは確認できないこともあります。そのため、拡大した視野での観察、光を当てる透照診、染色、噛み合わせの検査、歯周ポケット検査などを組み合わせて判断します。症状が出たり引いたりして、原因の歯を特定しにくいこともあります。

6. 被せ物・詰め物が合っていない/割れた

被せ物や詰め物を入れた歯が噛むと痛いときは、「いつから痛み始めたか」がヒントになります。

装着した直後から噛むと痛い場合は、被せ物の高さがわずかに合っておらず、その歯に力が集中していることがあります。この場合は、噛み合わせの高さを調整することで改善することがあります。

一方、しばらく問題なく使えていた歯が後から痛み始めた場合は、内部で二次的な虫歯が進んでいたり、歯の神経の炎症、歯のひび、根の先の病変、被せ物の欠け・脱離なども考えられます。原因によって対応が変わるため、検査が必要です。被せ物やセラミックの欠けについてはセラミック治療で失敗しないための記事もご覧いただけます。

しょう
しょう

「被せ物を入れてから噛むと痛い」という相談は、たまにあるよ。装着した直後なら、まず高さや噛み合わせを確認する。でも、しばらく使えてた歯が後から痛みだしたときは、二次虫歯や歯の神経・根の問題を疑って検査するようにしてる。「いつから」「噛む瞬間か、力を抜く瞬間か」「冷たいものでも痛むか」を聞くと、原因の切り分けがしやすいんだ。

7. 歯以外に由来する痛み(親知らず・副鼻腔炎など)

噛むと痛い・歯が痛いと感じても、原因が歯そのものではないことがあります。親知らずの周りの炎症(智歯周囲炎)や、上の奥歯では副鼻腔炎(蓄膿症)が関係して、噛むと痛いように感じることもあります。

どの歯が痛いのかはっきりしない、複数の歯が同時に痛む、といった場合は、歯以外の原因も含めて調べてもらうと安心です。

痛み方から考えられる原因の目安

「自分の痛みがどれに近いか」を整理するための目安表です。あくまで参考で、痛み方だけで診断はできません。最終的な原因は歯科医院で確かめてください。

痛み方・特徴考えられる主な原因受診の目安くわしい記事
噛むと響く・深いところが痛む/しみる痛みが強くなってきた虫歯の進行早めに相談虫歯とは
噛むと痛い+歯が浮いた感じ/脈打つ痛み・歯ぐきの腫れ根尖性歯周炎早めに(腫れ・発熱時は急いで)根管治療
特定の1本が噛むと痛い/朝に顎がだるい・歯がすり減っている歯ぎしり・食いしばり落ち着いて相談食いしばりの原因
噛むとぐらつく・歯が浮く/歯ぐきから出血・腫れ歯周病早めに相談歯周病の初期症状
特定の角度で噛むと鋭く痛む/噛んだ力を抜いた瞬間に痛む歯のひび・破折早めに相談
治療した歯(被せ物・詰め物)が噛むと痛い高さの不適合/二次虫歯/ひび・欠け直後は調整相談/後からは早めにセラミック治療で失敗しないために
何もしなくてもズキズキ痛む・夜眠れない歯の神経や根の強い炎症できるだけ早く根管治療

※原因の切り分けは目安です。複数が重なることもあります。出典:済生会「根尖性歯周炎とは」e-ヘルスネット(厚生労働省)「歯周病とは」

なお、冷たいものや歯ブラシで一瞬だけ「しみる」なら、知覚過敏(象牙質知覚過敏症)の可能性もあります。ただし、噛んだときの痛みが続く場合は、知覚過敏以外の原因も確認する必要があります。

噛むと痛いのは自然に治る?放置してよい?

結論として、噛むと痛い症状を「自己判断で放置」するのはおすすめしません。痛みが一時的に治まっても、原因そのものが消えたとは限らないからです。

たとえば歯ぎしりや軽い炎症が原因なら、負担が減って一時的に痛みが引くことはあります。ただし、虫歯や根の炎症、歯周病が背景にある場合は、症状が弱くても進行することがあります。状態によっては、根管治療や抜歯が必要になるケースもあります。

「治ったと思ったのにまた痛む」を繰り返しているなら、それは治っているのではなく、症状が波打っているだけかもしれません。一度は歯科で原因を確かめておくと安心です。

しょう
しょう

「痛かったけど治ったから大丈夫」と受診を見送るケースは、じつは注意が必要なんだ。根の炎症は、痛みが出たり引いたりを繰り返すことがあってね。痛みが引いた=治った、とは限らないから、一回は原因を確かめておいてほしいな。

今すぐできる対処法とやってはいけないこと

受診までのあいだにできる、応急的な対処をまとめます。あくまで一時しのぎなので、早めの受診とあわせて行ってください。

やってよいこと

  • 痛む側で噛まず、反対側で食べる
  • 柔らかい食事にして、患部を休ませる
  • 痛みが強いときは、市販の鎮痛薬を説明書どおりに使用する
  • 歯ブラシはやさしく当て、口の中を清潔に保つ

※妊娠中・授乳中の方、胃腸・腎臓・肝臓の病気がある方、喘息や薬のアレルギーがある方、ほかの薬を服用中の方は、鎮痛薬を使う前に薬剤師や医師に相談してください。成分が重複する薬の併用にも注意しましょう。

避けたほうがよいこと

  • ズキズキした痛みや腫れがあるときの、飲酒・激しい運動・長時間の入浴(血行が良くなると痛みが強まりやすい)
  • 痛む歯で無理に硬いものを噛む
  • 痛む部分を指や舌で繰り返し触る・刺激する
  • 「そのうち治る」と長期間放置する

歯科医院ではどのような検査をする?

噛むと痛い原因は、いくつかの検査を組み合わせて絞り込みます。痛み方だけでは原因を断定できないためです。主な検査は次のとおりです。

  • 打診・噛み合わせの検査:どの歯が痛いか、噛み合わせに問題がないかを確認する
  • 歯の神経の検査:冷温刺激や電気を使い、歯の神経が生きているかを調べる
  • 歯周ポケット・動揺度の検査:歯周病や歯のぐらつきを確認する
  • レントゲン検査:虫歯や根の先の炎症、骨の状態を確認する
  • ひびが疑われるとき:光を当てる透照診、拡大した視野での観察、部分的な噛み合わせの検査など
  • 必要に応じてCBCT(立体的に見られるレントゲン)で、根や骨を詳しく調べる

初期のひびや神経の炎症は、その場で原因を断定できず、経過を追いながら診断することもあります。「一度で分からない」ことも、めずらしくありません。

受診前に、次の点をメモしておくと原因を絞り込みやすくなります。

  • いつから痛むか
  • どの歯が痛いか(はっきりしない場合はその旨も)
  • 噛む瞬間か、力を抜く瞬間か
  • 冷たい・温かいもので痛むか
  • 痛みが何秒くらい続くか/夜も痛むか
  • 最近、歯の治療を受けたか
  • 硬いものを噛んだ覚えがあるか
  • 腫れや発熱があるか

歯医者に行く目安(受診のサイン)

次のようなサインがあれば、早めに歯科を受診してください。とくに腫れや発熱は、感染が広がっているサインのことがあります。

  • 数日たっても噛むと痛い状態が続く
  • 歯ぐきや顔が腫れている/熱っぽい
  • ズキズキして夜眠れない・痛み止めが効きにくい
  • 歯がぐらつく・浮いた感じが強い
  • 治療した歯(被せ物・詰め物)が噛むと痛い

さらに、腫れが急速に広がる・口が開きにくい・飲み込みにくい・息苦しいといった症状があるときは、歯科の診療時間を待たず、救急医療機関に相談してください。感染が広がっている可能性があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 噛むと痛いのに、歯医者で「虫歯じゃない」と言われました。なぜ痛むの?
A. 虫歯以外にも、歯の根の周囲の炎症・歯ぎしりや食いしばりの負担・歯周病・歯のひび・被せ物の不適合など、噛むと痛くなる原因は複数あります。虫歯がなくても痛む理由は十分に考えられます。

Q. 「歯が浮いた感じ」がして噛むと痛いです。何が考えられますか?
A. 歯の根の先の炎症(根尖性歯周炎)や、歯ぎしり・食いしばりによる歯根膜への負担でよく見られる症状です。脈打つ痛みや歯ぐきの腫れをともなう場合は、感染が広がっていることもあるため、早めに受診してください。

Q. 噛んだ力を抜いた瞬間に痛むのはなぜですか?
A. 歯のひび(亀裂歯)でみられることがある症状です。ただし、それだけでひびと決まるわけではありません。硬いものを噛んだときだけ痛む、痛みが出たり引いたりするといった場合は、歯のひびを含めて調べると原因が分かりやすくなります。

Q. レントゲンで異常なしと言われても、噛むと痛むことはありますか?
A. あります。初期の歯のひび、歯の神経の炎症、噛み合わせの負担などは、通常のレントゲンだけでは分からないことがあります。歯の神経の検査や噛み合わせの検査で、原因が見つかることもあります。

Q. 治療した歯(被せ物)が噛むと痛いのは失敗ですか?
A. 必ずしも失敗ではありません。装着直後は、噛み合わせの高さを調整するだけで改善することもあります。一方、しばらく使えていた歯が後から痛む場合は、二次虫歯やひび、根の炎症なども考えられるため、検査で原因を確かめます。

Q. 応急処置として、痛む歯を冷やしてもいいですか?
A. 頬の外から軽く冷やす程度なら和らぐこともありますが、強く冷やしすぎたり患部を直接刺激するのは避けてください。痛みが強い・腫れているときは、温めず安静に過ごしましょう。

Q. 噛むと痛い歯は、自然に治りますか?
A. 一時的に痛みが引くことはありますが、原因が消えたとは限りません。虫歯や根の炎症、歯周病が背景にある場合は、放置で進行することがあります。気になる痛みが続くときは、一度は歯科で確認しておくと安心です。

まとめ

噛むと痛い症状は、虫歯だけでなく、歯の根の周囲の炎症・歯ぎしり・歯周病・歯のひび・被せ物の不具合など、複数の原因で起こります。「虫歯じゃない=問題なし」ではないことを、まず知っておいてください。

大切なのは、痛み方から原因のあたりをつけ、放置せずに早めに歯科で確かめることです。原因は、打診や噛み合わせの確認、歯の神経の検査、歯周検査、レントゲンなどを組み合わせて絞り込みます。一時的に痛みが引いても、原因が残っていれば再発したり進行したりします。気になる痛みが続くなら、無理をせず、かかりつけの歯科医院に相談してみてくださいね。

参考文献・出典

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