歯周病のレントゲンでわかること・わからないこと|検査の役割をやさしく解説

歯周病

歯医者さんでレントゲンを撮ったあと、画面を見ながら「ここの骨が下がっていますね」と言われた。でも白黒の写真を見せられても、正直どこを見ればいいのか分からなかった——そんな経験はありませんか。

結論からお伝えします。歯周病のレントゲンでわかるのは、歯を支えている骨が、どこまで減っているかです。逆に、歯ぐきの炎症や歯周ポケットの深さは写りません。だからレントゲンだけで歯周病の状態は決まらないのです。

この記事では現役歯科医師の立場から、レントゲンでわかること・わからないこと、パノラマとデンタルの違い、そして気になる被ばくの話までをやさしく整理します。歯周病そのものについては歯周病とは?原因・症状・進行段階もあわせてどうぞ。

歯周病のレントゲンでわかること・わからないこと

まず全体像です。歯周病の検査でレントゲンが主に担当するのは歯槽骨など、かたい組織の状態で、それ以外は別の検査が担当しています。

レントゲンでわかることレントゲンではわからないこと
歯を支える骨(歯槽骨)がどこまで減っているか歯周ポケットの深さ
骨の減り方のパターン(平らに減る/斜めに減る)歯ぐきの炎症や出血があるかどうか
奥歯の根の分かれ目まで進んでいないか歯肉炎(まだ骨が壊れていない段階)
歯と骨のすき間や、骨のふちの線の変化今まさに進行している最中かどうか

この「わからないこと」があるからこそ、歯科医院ではレントゲンと歯ぐきの検査を必ずセットで行います。

歯周病のレントゲンで何がわかる?

モニターに映ったレントゲン画像を見ながら説明を受ける男性

レントゲンで歯科医師が見ているのは、主に次の4つです。

① 歯を支える骨が、どこまで減っているか

歯槽骨(しそうこつ)とは、歯の根っこが埋まっている、あごの骨のことです。歯周病が進むと、この骨が少しずつ失われていきます。

減り方は「歯根の長さに対して、どれくらい骨が減ったか」の割合で見ます。学会の診断基準では、15%未満なら軽度、15〜33%なら中等度、33%以上(歯根の長さのおよそ3分の1以上)なら重度が目安とされています。

ただし重症度は骨だけで決まるものではありません。歯周ポケットの深さや根の分かれ目の状態なども合わせて、歯1本ずつ判定していきます。

② 骨の減り方のパターン

骨の減り方には大きく2つのパターンがあります。

  • 水平性骨吸収:隣の歯とほぼ平行に、平らに減っていくタイプ
  • 垂直性骨吸収:1本の歯のまわりだけ、斜めにえぐれるように減るタイプ

この見分けが大事なのは、垂直性骨吸収は、噛む力の負担(咬合性外傷)や、歯周組織の破壊が急に進んだこととの関連が指摘されているからです。歯ぎしりや食いしばりの影響を疑うきっかけにもなります(→歯ぎしりの原因)。

ただし、レントゲンの所見だけで原因や進行の速さが決まるわけではありません。噛み合わせや歯のぐらつきも合わせて確かめていきます。

③ 奥歯の根の分かれ目まで進んでいないか

奥歯は根が2本、3本に分かれています。この分かれ目(根分岐部)まで歯周病が進むと、歯みがきや歯石取りだけでは改善しにくくなります。

レントゲンはここを見つける手がかりになりますが、実際の進行度は細い器具を分かれ目に入れて確かめて判定します。画像はあくまで参考です。

④ 歯と骨のすき間、骨のふちの線の変化

歯と歯槽骨の間には、歯根膜というクッションの層があり、レントゲンでは細いすき間として写ります。噛む力の負担がかかると、このすき間が骨の上のほうから広がって見えることがあります。

また、骨のふちに沿った白い線(歯槽硬線)が消えたり、逆に厚くなったりすることもあり、これらも所見のひとつとして確認します。

しょう
しょう

じつはレントゲンで自分が真っ先に見ているのは、歯そのものより「歯を支えている骨の高さ」なんだ。歯の根っこがどこまで骨に埋まっているか、だね。ここが下がっていると、歯の見た目はきれいでも歯周病が進んでいることがあるよ。

レントゲンでは“わからないこと”もある

レントゲンに写るものと写らないものの対比

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。レントゲンがきれいだからといって、歯周病がないとは言い切れません。

歯周ポケットの深さは写らない

歯周ポケットの深さは、細い目盛りのついた器具(プローブ)を歯と歯ぐきのすき間に入れて、1本につき4〜6か所を測って調べます。ミリ単位の深さは、レントゲン写真からは読み取れません。

数値の意味については歯周ポケットの数値の意味で詳しく解説しています。

歯ぐきの炎症・出血は写らない

今まさに炎症が起きているかどうかは、検査のときの出血の有無で判断します。プローブを入れて出血する場所は、ポケットの内側に炎症があることを意味します。出血がないことは炎症が比較的落ち着いている可能性を示しますが、それだけで判断はしません。たとえば喫煙している方は、炎症があっても出血が出にくいことがあります。

この情報はレントゲンにはまったく写りません(→歯ぐきから血が出る原因)。

歯肉炎の段階では、そもそも骨が壊れていない

歯肉炎とは、炎症が歯ぐきだけにとどまっている状態のことです。この段階では、歯を支える骨や歯根膜はまだ壊れていません。

つまり歯肉炎はレントゲンに写らないのです。「写真では問題なし」と言われても、歯ぐきが腫れていたり血が出たりしているなら、それは対処が必要なサインです(→歯周病の初期症状)。

だから検査は「画像・数値・見た目」のセットで行う

歯周病の検査項目を整理すると、レントゲンが担当しているのは全体の一部だとわかります。

調べること主な検査レントゲンの担当
炎症があるか歯ぐきの出血、プラークの付着状況担当しない
どこまで壊れたかポケットの深さ、歯槽骨の減り方、根の分かれ目の状態骨などかたい組織を担当
進みやすい条件があるか歯のぐらつき、噛み合わせ、喫煙などの生活習慣一部を補助
出典:日本歯周病学会『歯周病の検査・診断・治療計画の指針』の検査項目をもとに作成
しょう
しょう

「レントゲンで骨は大丈夫って言われたから安心」という人がいるんだけど、じつは歯ぐきの炎症は写真には写らないんだ。骨が減る前の段階、つまり今からのケアで十分間に合う時期こそ、写真ではおとなしく見える。歯ぐきの検査もセットでやるのが大事だね。

パノラマ(パントモ)とデンタルは何が違う?

パノラマ・デンタル・歯科用CTの撮影範囲の違い

歯科でよく使う撮影方法は3種類です。それぞれ役割が違います。

パノラマ(パントモ)|全体を1枚で

パノラマとは、上下のあご全体を1枚に写す撮影方法のことです。すべての歯の位置や向き、根っこの形、そのまわりの骨、親知らずの状態までまとめて確認できます。

ただし、装置が動きながら撮る仕組みのため、全体的に画像はややぼやけます。細かさの目安は1mmあたり5本程度の線を見分けられるレベルです。

デンタル|数本ずつ細かく

デンタルとは、3×4cm程度の小さなフィルムやセンサーを口の中に入れて、数本ずつ撮る方法のことです。フィルムを使った場合で1mmあたり20本以上を見分けられるとされ、パノラマよりずっと細部を確認しやすいのが特徴です。

骨の高さを1本ずつ詳しく確認したいときは、こちらが向いています。

歯科用CT|立体的に見る

骨の状態を立体的に確認できますが、被ばく線量は他の歯科撮影より多くなる傾向があります。歯周病の検査で必ず使うものではなく、必要と判断されたときに追加する検査です。

パノラマデンタル歯科用CT
写る範囲上下のあご全体数本ずつ必要な部分を立体的に
細かさ1mmあたり5本程度細部が鮮明(フィルムで1mmあたり20本以上)立体的に確認できる
向いていること全体の把握・比較骨の高さの精密な確認複雑な形の把握
細かさの目安は日本歯科医師会「テーマパーク8020」の記載による
しょう
しょう

自分の場合は、1年に1回くらいのペースでパントモを撮らせてもらって、前の写真と並べて比べているよ。1枚だけだと「今こうなっている」しか分からないけど、2枚あると「この1年で変わったのか、変わっていないのか」が見えるんだ。そのうえで、もっと詳しく知りたい場所が出てきたら、そこだけデンタルを追加で撮る感じだね。

「骨が減っている」と言われたらどうすればいい?

これ以上骨を減らさないことを表す盾のイラストと女性

写真は「これまでの積み重ね」の記録

ここは知っておいてほしい大事なことです。レントゲンに写る骨の減り方は、過去から今日までに壊れた分が積み重なった結果です。

つまり写真が伝えているのは「今どれくらい炎症があるか」ではなく、「これまでにどれだけ失われたか」。過去の記録なので、ショックを受けすぎる必要はありません。適切なケアと治療で、これ以上の進行を抑えていくことを目指します。

目標は「これ以上減らさないこと」

減ってしまった骨をもとどおりにするのは簡単ではありません。だからこそ治療でまず目指すのは、原因を取り除いて進行を止めることです。

具体的には、毎日のプラークコントロールを整えたうえで、歯石取りや、歯ぐきの中の歯石を取るSRPなどを進めていきます。全体の流れは歯周病の治療で解説しています。

前の写真と比べると、進み方が見える

1枚だけでは「今の状態」しか分かりません。数年前の写真と並べると、減り方がゆっくりなのか、急に進んだのかが見えてきます。

どのくらいの間隔で撮るかは、歯ぐきの状態や治療の内容によって一人ひとり違います。気になるときは、次はいつ撮る予定かを聞いてみてください。

歯科のレントゲンの被ばくは大丈夫?

歯科用エックス線撮影装置と被ばくへの配慮を表すアイコン

1枚あたりの量はごくわずか

歯科の撮影で受ける放射線の量は、次のとおりです。

種類放射線の量の目安出典
デンタル1枚0.01ミリシーベルト程度東京都歯科医師会(2011年)
パノラマ1枚約0.03ミリシーベルト程度東京都歯科医師会(2011年)
日本人が1年間に自然に浴びる量平均2.1ミリシーベルト環境省(令和7年度版)
歯科の数値は2011年の資料に示された概数です。実際の線量は装置や撮影条件によって異なります。

歯科では必要な部分だけに照射範囲を絞って撮影しています(口内法では直径7cm程度の照射口が使われてきました)。デジタル化が進んだことで、フィルム時代より少ない量で撮れるようにもなっています。

とはいえ「少ないから何度でも」ではありません。必要のない撮影は繰り返さず、診断のうえで必要なときに行うのが原則です。

必要なときだけ撮る、という考え方

意外に思われるかもしれませんが、患者さんの被ばく量そのものに法的な上限はありません。そのかわり、撮影で得られる利益がリスクを上回ると歯科医師が判断したときに提案する、という考え方で運用されています。気になるときは「なぜ今回は撮るのか」を遠慮なく聞いてみてください。

鉛のエプロンは何のため?

ここは少し意外かもしれません。学会の指針では、パノラマ撮影では防護エプロンによる線量を減らす効果はほとんどないとされています。それどころか、エプロンが写真に写り込んで撮り直しになることがあるため、使わないほうがよいという考え方もあります。

デンタルの撮影では、撮る向きによってはエプロンを使う意義があるとされています。ただし必ず使わなければならないものではなく、線量を下げるためというより心理面への配慮という側面もあると説明されています。

ですので、エプロンをしなかったからといって、その医院が手を抜いているわけではありません。

しょう
しょう

この話を聞くと「じゃあエプロンは意味ないの?」と思うかもしれないね。でも自分は、患者さんの心理的な安心のために着けてもらっているよ。数字のうえでの効果が小さくても、安心できること自体に意味があると思っているんだ。

妊娠中・妊娠の可能性があるとき

妊娠中の方、または妊娠している可能性のある方は、撮影の前に必ずお伝えください。そのうえで、今どうしても撮る必要があるのか、時期をずらせるのかを歯科医師が判断します。黙って我慢するのがいちばんよくありません。

歯周病のレントゲンについてよくある質問

Q. レントゲンを撮らずに治療してくれる歯医者もありますが、大丈夫ですか?
A. 撮るかどうかは、そのときの症状や予定している処置をふまえて歯科医師が判断します。ただし歯ぐきの中の骨の状態は、外から見ても触っても分かりません。骨の状態が気になる場合は、撮影の必要性について歯科医院で相談してみてください。

Q. 撮ったレントゲン写真はもらえますか?
A. 対応は医院によって異なるため、希望があればその場で伝えてみてください。画像を受け取らなくても、画面を見ながら「どこの骨がどうなっているのか」を説明してもらうだけで、状態はかなり理解できます。

Q. 前の歯医者で撮った写真は使えますか?
A. 受け渡しができるかは医院同士の対応によります。ただし比較という意味では、過去の写真が残っていること自体に価値があります。転院時は以前どこで撮影したかを伝えておくとよいでしょう。

Q. レントゲンだけで「軽度・重度」が決まるのですか?
A. いいえ。骨がどこまで減っているかは判定材料のひとつで、歯周ポケットの深さや根の分かれ目の状態なども合わせて、歯1本ずつ判定します。

Q. 自分で写真を見て、骨が減っているか分かりますか?
A. 正直むずかしいところです。骨の高さは、撮影の角度や隣の歯との位置関係によっても違って見えます。自己判断せず、説明を受けながら「どこを見ているのか」を聞くのが確実です。

Q. 歯科用CTは撮ったほうがいいですか?
A. 歯周病の検査で必ず必要になるものではありません。デンタルやパノラマより被ばく線量が多くなる傾向があるため、立体的な確認が必要と判断されたときに追加する検査です。

まとめ|レントゲンは「骨の今」を知るための検査

レントゲン・歯ぐきの検査・定期的な確認を示す歯科医師

最後にポイントを整理します。

  • レントゲンでわかるのは、歯を支える骨がどこまで減っているかと、その減り方のパターン
  • 歯周ポケットの深さ、歯ぐきの炎症、歯肉炎の段階は写らない
  • だから歯ぐきの検査とセットで、はじめて状態が分かる
  • 写真に写るのはこれまでの積み重ね。これから止められるかは今後のケア次第
  • 1枚あたりの放射線の量はごくわずか。必要と判断されたときに撮る

「骨が下がっている」と言われると不安になりますが、それは過去の記録です。大切なのは、これ以上減らさないために今から何をするか。定期的な歯科検診で写真を撮り続けていけば、変化にも早く気づけます。

歯ぐきの状態が気になる方は、まずはかかりつけの歯科医院で検査を受けてみてください。日ごろの予防は歯周病の予防、喫煙の影響はタバコと歯周病もあわせてどうぞ。

参考文献・出典

歯周病
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この記事を書いた人
しょう

現役歯科医師(臨床経験10年以上)。むし歯・歯周病の治療から、ジルコニア・セラミックなど自費の補綴治療まで幅広く診療しています。「もっと早く知っていれば」を減らせるよう、診療室で患者さんに話すような内容を、臨床経験と公的機関・学会の情報をもとにわかりやすく発信しています。

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