入れ歯が痛い・合わないときの対処法|痛む場所でわかる原因と受診の目安

詰め物・被せ物・自費診療

入れ歯が当たって痛い。噛むとズキッとする。前は合っていたのに、最近ゆるくてガタつく。こうしたお悩みは、入れ歯を使っている方にとても多いものです。

じつは痛む場所や痛み方は、原因を考えるうえで大きな手がかりになります。原因が違えば、歯科医院で行う処置も変わります。削って整えるだけで良くなるものもあれば、内側を作り直したほうが早いものもあります(最終的な判断には歯科医院での検査が必要です)。

この記事では、現役の歯科医師として、痛みの見分け方・自宅でできること・歯科医院で行う処置・受診のタイミングを順番に整理します。入れ歯そのものの種類については部分入れ歯の種類と選び方もあわせてご覧ください。

  1. 入れ歯が痛いとき、まず知ってほしい3つのこと
    1. 痛みを我慢して使い続けてはいけない
    2. 自分で削ったり曲げたりしない
    3. 痛くても、受診の直前は入れ歯を入れてきてほしい
  2. 入れ歯が痛いのはなぜ?痛む場所でわかる原因
    1. 一点だけがピリッと痛む
    2. 入れ歯のふち(辺縁)に沿って痛い
    3. 噛んだときだけ痛い
    4. 全体がゆるくて、あちこち当たる
    5. 部分入れ歯のバネがかかっている歯が痛い
    6. 痛みの出かたから考えられる原因(早見表)
  3. 新しい入れ歯が痛いのは異常?慣れるまでの期間
    1. 調整は複数回が前提
    2. それでも痛みが続くときに考えられること
  4. 長く使っている入れ歯が合わなくなる原因
    1. 顎の骨(顎堤)がやせて、すき間ができる
    2. 人工歯がすり減って噛み合わせがずれる
    3. 入れ歯自体の変形・汚れの固着
    4. 残っている歯や口の中の状態が変わった
  5. 入れ歯が痛いときの応急処置|自宅でできること・できないこと
    1. 食べ方を変えて負担を減らす
    2. 外して休ませるときの注意点
    3. やってはいけないこと
  6. 入れ歯安定剤は使っていい?使うときの注意点
    1. 安定剤は「合わない原因」を治すものではない
    2. 使うなら歯科医師に相談したうえで
  7. 歯科医院ではどんな処置をする?調整・リライン・作り直し
    1. ① 調整(当たっている所を整える)
    2. ② 粘膜調整(ティッシュコンディショニング)
    3. ③ リライン・リベース(内側を作り直して合わせ直す)
    4. ④ 修理
    5. ⑤ 作り直し(新製)を検討するとき
    6. 保険で作り直すときの「6か月」のルール
  8. 痛みが続く・治らないときに考えられる別の原因
    1. 入れ歯の下の粘膜の炎症(義歯性口内炎)
    2. 骨の出っ張り(骨隆起)
    3. 口の乾きや持病が関係することもある
  9. 早めに受診したい症状|入れ歯以外の病気が隠れていることも
  10. 入れ歯のトラブルを防ぐために|痛くなる前にできること
    1. 毎日のお手入れが痛みを遠ざける
    2. 痛くなくても定期的にチェックを受ける
  11. 入れ歯が痛い・合わないときのよくある質問(FAQ)
  12. まとめ|入れ歯の痛みは原因に合った調整・治療が大切
  13. 参考文献・出典

入れ歯が痛いとき、まず知ってほしい3つのこと

結論からお伝えします。入れ歯の痛みは我慢せず、早めに歯科医院に相談してください。そして受診までの間に、知っておいてほしいことが2つあります。

痛みを我慢して使い続けてはいけない

日本歯科医師会は、合いの悪い入れ歯を使い続けると粘膜を傷つけたり、不必要な骨の吸収を引き起こしたりするため、早めに治療を受けるよう注意を促しています。「そのうち慣れるだろう」と数か月放置すると、傷が治りにくくなったり、顎の状態そのものが変わって調整が難しくなったりします。

自分で削ったり曲げたりしない

痛いところが分かると、つい自分で削りたくなります。しかし入れ歯は、粘膜全体で噛む力を受け止めるように設計されています。一部を削ると力の配分が変わり、別の場所に新しい痛みが出ることがあります。バネ(クラスプ)を自分で曲げるのも同じで、支えている歯に無理な力がかかる可能性があります。

痛くても、受診の直前は入れ歯を入れてきてほしい

日本補綴歯科学会のガイドラインには、痛みがあるときは入れ歯を外しておき、来院日の朝からは装着してもらうという指導内容が示されています。理由はシンプルで、入れ歯が当たっている痕(あと)が粘膜に残っていないと、どこを調整すればよいか分かりにくくなるからです。

「痛いから外していたけれど、予約の日の朝から入れてきた」——これが、いちばん調整しやすい状態です。

しょう
しょう

入れ歯の痛みで一番心配なのは、我慢して来なくなってしまうことなんだ。当たりの範囲が限られていれば、比較的短時間の調整で対応できることもある。遠慮する必要はまったくないよ。

入れ歯が痛いのはなぜ?痛む場所でわかる原因

入れ歯の痛みは、大きく「当たっている痛み」と「噛み合わせの痛み」に分かれます。どちらかによって、歯科医院で行う処置がまったく違います。なお、複数の原因が重なっていることもあります。

一点だけがピリッと痛む

特定の一か所だけが痛む場合、入れ歯の内側にできたわずかな突起や、骨の出っ張り(骨隆起)、粘膜が薄く入れ歯の圧を受けやすい部分に強く当たっていることが考えられます。いわゆる「入れ歯ずれ」による傷(褥瘡性潰瘍)ができていることも多く、当たっている部分を削って逃がす調整で改善することがよくあります。

入れ歯のふち(辺縁)に沿って痛い

入れ歯の縁に沿って、線を引いたように赤くなったり痛んだりする場合は、入れ歯の縁が長すぎる、または厚すぎる可能性があります。頬の内側や舌の下、上あごの奥のほうがヒリヒリするときは、このタイプが疑われます。縁の形を整える調整が中心になります。

噛んだときだけ痛い

入れ歯を入れているだけなら平気なのに、噛むと痛い——この場合は、入れ歯の内側ではなく噛み合わせに原因があることが少なくありません。

入れ歯の内側は合っているのに噛むと痛む・外れる場合は、噛み合わせを検査して調整で改善するかを確かめる流れが示されています。内側だけを削っても良くならないタイプです。

全体がゆるくて、あちこち当たる

特定の一か所ではなく、あちこちが当たる・全体がゆるい・食事のたびに動く。この場合は入れ歯の内側と歯ぐきの適合が悪くなっている状態が考えられます。後述する「リライン」という処置が向いていることが多いタイプです。

部分入れ歯のバネがかかっている歯が痛い

部分入れ歯では、バネ(クラスプ)をかけている歯に噛む力の一部が伝わります。その歯が痛む・しみるという場合、その歯自体に問題が起きている可能性と、入れ歯側の問題の両方を確認する必要があります。自己判断で「バネが強すぎるだけ」と決めつけず、歯科医院でその歯の状態を診てもらってください。

痛みの出かたから考えられる原因(早見表)

痛みの出かた考えられる主な原因歯科医院での主な対応
一点だけがピリッと痛む内側の小さな突起、骨の出っ張りへの当たり当たっている部分の調整
ふちに沿って痛い・赤い入れ歯の縁が長い・厚い縁の形の調整
噛んだときだけ痛い噛み合わせのずれ噛み合わせの調整
全体がゆるい・あちこち当たる内側と歯ぐきの適合不良調整、またはリライン
粘膜に潰瘍や強い圧痕がある粘膜そのものが傷んでいる粘膜調整(ティッシュコンディショニング)
バネのかかる歯が痛い支えている歯の問題、入れ歯側の問題その歯の検査と入れ歯の調整
出典:日本補綴歯科学会「有床義歯補綴診療のガイドライン(2009改訂版)」「リラインとリベースのガイドライン2007」をもとに作成。この表は原因を考える手がかりであり、診断ではありません。実際の判断は歯科医院での検査によります。
しょう
しょう

診察のときに一番助かるのは、「ここが痛い」と指でさしてもらえることなんだ。鏡で見ておくのでもいいし、家族に見てもらうのでもいい。それだけで調整がぐっと早くなるよ。

新しい入れ歯が痛いのは異常?慣れるまでの期間

結論からいうと、新しい入れ歯に何度か調整が必要なのは、異常ではなく普通のことです。

調整は複数回が前提

日本補綴歯科学会のガイドラインでは、入れ歯の調整は装着後に複数回必要であると明記されています。歯ぐきは噛む力で少しずつ変化するため、一度で仕上がることのほうが少ないのです。

ガイドラインに引用された報告では、入れ歯を入れたあとの来院が1〜2回だった方が49〜67%、3回以上だった方が20〜40%でした。これは条件の異なる3つのグループを調べた結果で、すべての方に当てはまる数字ではありません。別の報告では、対象となった総入れ歯の方の調整は装着後3週までに終わっていましたが、必要な期間には個人差があります。

また、新しい入れ歯で唾液が一時的に増えることがありますが、これも1〜3週間程度で落ち着くとされています。話しにくさや異物感は、数か月かけて徐々に薄れていくとされています。

それでも痛みが続くときに考えられること

調整を重ねても同じ場所が痛み続ける場合は、噛み合わせが合っていない、粘膜が治りきっていない、骨の出っ張りが原因になっているなど、削るだけでは解決しないケースがあります。遠慮せず「何回か削ってもらったけれど、まだ同じところが痛い」と伝えてください。

長く使っている入れ歯が合わなくなる原因

よく合っていた入れ歯でも、口の中の変化によって年月とともに合わなくなることがあります。作りが悪かったからではありません。

顎の骨(顎堤)がやせて、すき間ができる

入れ歯を使っているかどうかにかかわらず、顎の土手(顎堤)は加齢とともに吸収します。そのため、どれだけ適合のよい入れ歯でも年月とともに合わなくなるとされています。すき間ができると入れ歯が動き、動いた分だけ粘膜がこすれて痛みが出ます。

人工歯がすり減って噛み合わせがずれる

入れ歯の人工の歯も、使っていれば少しずつすり減ります。すり減りが進むと噛み合わせの高さが変わり、噛んだときの力の伝わり方が変わって痛みにつながります。

入れ歯自体の変形・汚れの固着

熱いお湯をかけた、落として歪んだ、といったことのほか、汚れが固まって内側に付着することでも合いは悪くなります(→入れ歯のお手入れガイド)。

残っている歯や口の中の状態が変わった

部分入れ歯の場合、支えている歯が虫歯や歯周病で動いたり抜けたりすれば、入れ歯は合わなくなります。入れ歯が合わなくなったことが、残っている歯のトラブルのサインであることも珍しくありません。

入れ歯が痛いときの応急処置|自宅でできること・できないこと

受診までの間、自宅でできることは限られています。あくまで「悪化させないための時間かせぎ」と考えてください。

食べ方を変えて負担を減らす

入れ歯を入れたあとの食事については、やわらかいものを選ぶ・小さく切って食べる・左右両方で同じように噛むことが指導内容として示されています。総入れ歯の方は、前歯で噛み切らないことも大切とされています。前歯に力が集中すると入れ歯が不安定になり、粘膜や骨に負担がかかるためです。

外して休ませるときの注意点

痛みが強いときは入れ歯を外して粘膜を休ませてかまいません(受診日の朝からは装着してください)。ただし部分入れ歯を長期間外しっぱなしにしないでください。ガイドラインには、長く外していると残っている歯が動いて入れ歯が入らなくなることがあると明記されています。

やってはいけないこと

  • 自分で削る・バネを曲げる
  • 熱湯で消毒する(変形の原因になります)
  • 市販の痛み止めや口内炎の薬でしのぎ続ける(原因は残ったままです)
  • 痛いからと入れ歯をまったく使わなくなる

入れ歯安定剤は使っていい?使うときの注意点

結論として、入れ歯安定剤は「使ってはいけないもの」ではありませんが、痛みや不適合の解決策ではありません。

安定剤は「合わない原因」を治すものではない

入れ歯が合わなくなる主な原因は、顎の骨の変化と噛み合わせの変化です。安定剤は入れ歯と歯ぐきのすき間を一時的に埋めるものであり、骨の変化や噛み合わせのずれそのものを治すものではありません。安定剤で「なんとか使える」状態が続くと、本来なら調整やリラインで対応できたはずのずれに気づかないまま時間が過ぎてしまうことがあります。

使うなら歯科医師に相談したうえで

痛み・傷・出血があるときは、安定剤でしのがずに受診を優先してください。合っていない部分に安定剤を足すと、力のかかり方が変わって別の場所に負担が移ることがあります。

一時的に使う場合も、できれば事前に歯科医師へ相談を。難しければ、受診のときに「安定剤を使っています」と必ず伝えてください。どのくらい合わなくなっているかを踏まえて調整できます。なお安定剤の残りは汚れがたまる原因になるため、使った日はいつも以上にていねいに洗ってください。

しょう
しょう

安定剤そのものを否定するつもりはないよ。ただ、何年も安定剤だけでしのいでいると、その間にどんどん合わなくなっていることがあるんだ。使っていることを教えてくれれば、それを前提に調整できるからね。

歯科医院ではどんな処置をする?調整・リライン・作り直し

「歯医者に行ったら、いきなり作り直しと言われるのでは」と心配される方がいます。実際には、作り直しの前にできることがいくつもあります

① 調整(当たっている所を整える)

いちばん多い処置です。当たっている部分を削って逃がしたり、縁の形を整えたり、噛み合わせを削り合わせたりします。

② 粘膜調整(ティッシュコンディショニング)

粘膜に潰瘍や強い圧痕ができている場合、まず粘膜を回復させる処置が行われることがあります。やわらかい材料を入れ歯の内側に入れ、力が一か所に集中しないようにして粘膜の状態を整える方法です。

③ リライン・リベース(内側を作り直して合わせ直す)

リラインとは、入れ歯の粘膜に接する面を新しい材料で裏装し、歯ぐきとの適合を改善する処置です。保険では「有床義歯内面適合法(有床義歯床裏装)」と呼ばれます。

リベースとは、人工の歯と噛み合わせを保ちながら、入れ歯の床(歯ぐきに乗る部分)の材料を全面的に置き換える処置です。

リラインが向いているのは、噛み合わせは問題ないけれど、内側の適合だけが悪くなっている場合です。リラインやリベースで対応できれば作り直しに比べて通院回数も費用も抑えられるとされています。逆に、噛み合わせそのものを直せない場合はリラインの適応外となります。

④ 修理

入れ歯が割れた、バネが折れたという場合は修理で対応できることがあります。ただし金属部分の破損などはいったん預かる必要があり、状態によっては作り直しになることもあります。

⑤ 作り直し(新製)を検討するとき

調整やリラインを繰り返して内側が厚くなってきた、強度が足りない、長年の使用で材料が劣化・変色している場合は作り直しが検討されます。噛み合わせのずれが大きく、調整では直しきれない場合も同様です。

保険で作り直すときの「6か月」のルール

知っておいていただきたい実務的なルールがあります。保険で入れ歯を新しく作る場合、原則として前回作ってから6か月以上あける必要があるとされています(厚生労働省の通知による)。転居で通院できなくなった場合など特別な事情では例外がありますが、「合わないからすぐ作り直す」ということは基本的にできません。

だからこそ、合わないと感じた時点で早めに相談して、調整やリラインで対応できるかを確かめることに意味があります。なお、この6か月というルールは新しく作る場合の話で、調整・修理・リラインには別の算定条件があります。基準となる日の考え方や実際に受けられる処置・費用は状態によって変わるので、かかっている歯科医院で確認してください。

しょう
しょう

「作り直しましょう」と言われると、失敗したように感じる人がいるけど、そうじゃないんだ。顎の形は年月とともに変わっていくものだから、それに合わせて作り直すのはごく自然なことだよ。

痛みが続く・治らないときに考えられる別の原因

調整をしても痛みが引かないとき、入れ歯そのもの以外に原因があることもあります。

入れ歯の下の粘膜の炎症(義歯性口内炎)

入れ歯が当たる部分の粘膜が赤くなる状態は、義歯性口内炎と呼ばれます。原因のひとつとして、カンジダという真菌(かびの仲間)の関与が知られています。ただし粘膜が赤いからといって、すべてがカンジダによるものとは限りません。

日本口腔外科学会によると、口腔カンジダ症では粘膜の痛みや味覚障害が出ることがあり、粘膜が赤くなるタイプでは白い苔がつくタイプよりヒリヒリとした痛みが強くなるとされています。治療は口の中の清掃に加え、抗真菌薬のうがい薬や塗り薬などが用いられます。夜間に入れ歯を外すことで粘膜の異常や義歯性口内炎が減ることも示されています。

骨の出っ張り(骨隆起)

上あごの真ん中や下あごの内側に骨の出っ張りがあると、そこに入れ歯が強く当たって痛みが出ることがあります。多くは入れ歯側で逃がす調整で対応しますが、調整では改善しない大きな骨隆起は、外科的に整えることが検討される場合があります。

口の乾きや持病が関係することもある

糖尿病などがあると粘膜が機械的な刺激に弱く、入れ歯の下の組織が傷つきやすいこと、口が乾いていると入れ歯が吸着しにくく傷ができやすいことが指摘されています。調整を繰り返しても改善しないときは、こうした背景も含めて相談してみてください。

早めに受診したい症状|入れ歯以外の病気が隠れていることも

入れ歯の痛みの多くは調整で対応できますが、次のような症状があるときは、入れ歯以外の原因も含めて早めに歯科医院で確認してもらってください。

  • 入れ歯を外していても強い痛みが続く
  • 腫れ・膿・発熱がある
  • 出血している、深い傷ができている
  • 痛みで食事や水分をとるのが難しい
  • 2週間程度たっても治らない潰瘍・しこり、赤い部分や白い部分がある

とくに最後の「治らない傷」は重要です。入れ歯が当たってできた傷は、原因を取り除けば通常は治っていきます。当たりを調整しても2週間ほど治らない傷やしこりが残る場合は、入れ歯以外の病気の可能性も含めて診てもらう必要があります。

入れ歯のトラブルを防ぐために|痛くなる前にできること

毎日のお手入れが痛みを遠ざける

入れ歯の汚れ(デンチャープラーク)は、口臭だけでなく粘膜の炎症や残っている歯の虫歯・歯周病の原因になります。ブラシでの洗浄と洗浄剤の使用を組み合わせるのが基本です。研磨剤入りの歯磨き粉や熱湯は使わないでください。また家庭用の漂白剤を自己判断で使わず、入れ歯の材質に合った入れ歯用洗浄剤を、説明書どおりに使ってください。

痛くなくても定期的にチェックを受ける

ここがいちばんお伝えしたいところです。顎の骨の吸収や噛み合わせの変化は、症状がないまま少しずつ進みます。本人が気づかないうちに進むため、定期的な検診が望ましいとされています。「痛くなってから行く」のではなく、痛くならないうちに診てもらう。これが入れ歯を長く快適に使うコツです(→歯科検診の頻度や内容)。

入れ歯が痛い・合わないときのよくある質問(FAQ)

Q. 入れ歯が痛いとき、外していたほうがいいですか?
A. 痛みが強いときは外して粘膜を休ませてかまいませんが、受診日の朝からは装着してください。当たっている痕が残っていたほうが調整しやすくなります。また部分入れ歯を長期間外したままにすると、残っている歯が動いて入らなくなることがあります。

Q. 新しい入れ歯は、何回くらい調整に行くものですか?
A. 学会のガイドラインに引用された報告では、装着後の来院が1〜2回だった方が49〜67%、3回以上だった方が20〜40%でした。複数回の調整は想定された流れなので、遠慮する必要はありません。

Q. 何回削ってもらっても同じところが痛みます。どうすればいいですか?
A. 内側の当たりではなく、噛み合わせや粘膜の状態、骨の形など別の原因が関係している可能性があります。「削ってもらったが同じ場所が痛む」と具体的に伝えると、検査の方向が変わります。

Q. 入れ歯でできた傷が2週間ほど治りません。大丈夫でしょうか?
A. 入れ歯が当たってできた傷は、原因を取り除けば通常は治っていきます。当たりを調整しても2週間ほど治らない傷やしこりが残る場合は、入れ歯以外の病気の可能性も含めて歯科医院で確認してもらってください。

Q. 入れ歯安定剤を使い続けても大丈夫ですか?
A. 安定剤はすき間を一時的に埋めるもので、合わなくなった原因そのものを治すものではありません。痛み・傷・出血があるときは安定剤でしのがず受診してください。使う場合は歯科医師に伝えたうえで、合わなくなっている原因を確認してもらいましょう。

Q. 入れ歯が合わないのは、保険の入れ歯だからですか?
A. 一概にそうとはいえません。入れ歯が合わなくなる大きな原因は顎の骨の変化と噛み合わせの変化で、これは費用の区分にかかわらず起こります。まずは今の入れ歯を調整できるか確認するのが先です。

まとめ|入れ歯の痛みは原因に合った調整・治療が大切

最後に要点を整理します。

  • 入れ歯の痛みは我慢しない。合いの悪い入れ歯は粘膜を傷つけ、不必要な骨の吸収を招くと日本歯科医師会も注意を促している
  • 自分で削らない。受診日の朝からは入れ歯を装着してくる
  • 痛む場所は原因を考える手がかりになる。「当たっている痛み」と「噛んだときの痛み」は対応が違う
  • 新しい入れ歯の調整は複数回が前提。遠慮しなくてよい
  • 作り直しの前に、調整・粘膜調整・リラインという選択肢がある
  • 外しても痛む、腫れ・膿がある、2週間治らない傷やしこりがあるときは早めに受診する
  • 症状がなくても定期的に診てもらうことが、いちばんのトラブル予防になる

入れ歯の痛みは、原因に合った調整で改善することがあります。長く合わない状態が続いている場合や残っている歯の状況が変わってきている場合には、歯を失ったときの治療の選択肢のなかでインプラントなど他の方法が向いているかを相談してみるのも一つです。

痛いからと入れ歯を使わないまま放置すると、噛む力が落ちるだけでなく残っている歯にも影響が出ます(歯を失ったまま放置するとどうなるか)。まずは、いま使っている入れ歯を診てもらうところから始めてみてください。

参考文献・出典

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