いびきは歯科のマウスピースで改善できる?保険適用の条件と受診の順番を解説

症状・お悩み

「家族にいびきを指摘された」「日中どうしても眠い」——そんなとき、歯科で作るマウスピースが選択肢になることをご存じでしょうか。

ただし、ここには大切な順番があります。いびきが気になったからといって、いきなり歯科に行っても保険でマウスピースを作ることはできません。まず医科での検査が必要です。

この記事では、現役歯科医師の自分が、歯科で作るマウスピース(口腔内装置)のしくみ・受診の順番・CPAPとの違い・期待できることと限界を解説します。口の乾きやいびきの背景が気になる方は、口呼吸の治し方もあわせてご覧ください。

いびきはどうして起こるの?

気道が確保された状態と、舌が落ち込んで気道が狭くなった状態を比べたイラスト

いびきは、睡眠中に狭くなった上気道(空気の通り道)を空気が通るときに起こります。眠っている間は筋肉がゆるみ、舌やのどの奥が落ち込んで気道が狭くなりやすくなります。

下顎が小さいなどの顎や顔の形も、気道の狭さに関係する要因の一つです。日本睡眠歯科学会も、日本人では下顎の骨格が小さいことがいびきに関係すると説明しています。ただし要因はこれだけではなく、肥満・加齢・扁桃の肥大・鼻の病気なども関係します。太っていなくてもいびきをかく方がいるのは、こうした複数の要因があるためです。

注意したいのは、どんないびき?

睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返され、日中の眠気などをともなう状態を、睡眠時無呼吸症候群(SAS)といいます。診断には睡眠中の呼吸を調べる検査が必要です。

大きないびきは受診を考えるきっかけになりますが、いびきの音量だけで重症度を判断することはできません。次のような場合は、一度相談してみてください。

  • 家族に「息が止まっている」と指摘されたことがある
  • 日中に強い眠気があり、居眠りをしてしまう
  • 朝起きたときに頭痛や倦怠感がある

放置すると高血圧・脳卒中・心臓病などのリスクが高まることが指摘されており、e-ヘルスネットでも、ひどいいびきや睡眠中の呼吸停止がある場合は速やかに専門の医療機関で検査・治療を受けることが大切とされています。

しょう
しょう

いびきって、家族に迷惑をかける音の問題だと思われがちなんだ。でも本当に大事なのは、その裏で呼吸が止まっていないかということ。「息が止まってるよ」と言われたことがあるなら、それは放っておかないでほしいサインだよ。

歯科で作るマウスピース(口腔内装置)とは?

口腔内装置で下顎を前に出し、気道を確保するしくみを示した図

口腔内装置(こうくうないそうち/OA)とは、睡眠中に装着して気道を広げるための、歯科で作るマウスピースです。スリープスプリントとも呼ばれます。

どうして気道が広がるの?

マウスピースで下顎を前に出した状態に保つことで、舌が落ち込むのを防ぎ、気道を確保するしくみです。上下の歯にはめる形の装置で、下顎をわずかに前方へ移動させます。

気道が広がることで、いびきや無呼吸の軽減が期待できます。ただし、どのくらい効果が出るかには個人差があります。

どんな人に向いているの?

口腔内装置は、主に軽症〜中等症の閉塞性睡眠時無呼吸で検討されます。重症の場合は一般にCPAPが優先されますが、CPAPを続けられない場合や、医師が適切と判断した場合には、口腔内装置や併用が検討されることもあります。

どの治療を選ぶかは、検査結果と全身の状態をふまえて医師が判断します。自己判断で決めるものではありません。

歯科に行く前に|まず医科での検査が必要です

医科での検査から診断・紹介・装置の作製・効果確認までの5つのステップ

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい点です。保険でマウスピースを作るには、医科で睡眠時無呼吸症候群と診断され、歯科への紹介(診療情報提供書)を受ける必要があります。

いびきが気になるからと歯科に直接来ていただいても、その場で保険のマウスピースを作ることはできません。順番が決まっているためです。

受診から装置ができるまでの流れ

順番どこで何をする
医科(耳鼻咽喉科・呼吸器内科・睡眠外来など)問診と睡眠中の呼吸の検査
医科検査結果をもとに診断。治療方針を決める
医科 → 歯科マウスピースが適していれば、歯科へ紹介(診療情報提供書)
歯科お口の中の状態を確認し、型取り・装置の作製・調整
歯科 ⇄ 医科装着後の効果を医科と連携して確認。歯科でも定期的に確認

検査は、自宅でできる簡易的なものと、医療機関に一泊して行う精密な検査があります。どちらを行うかは医師が判断します。

いびきだけで診断がつかない場合は?

検査の結果、睡眠時無呼吸症候群の診断に至らなかった場合、保険でマウスピースを作ることはできません。いびき対策として希望する場合は、自費での作製になります。

この場合も、まず検査を受けておくことに意味があります。「ただのいびき」なのか「治療が必要な状態」なのかが分かるためです。

しょう
しょう

いびきが気になると、まず歯科でマウスピースを作ればいいと思う方もいるんだけど、順番としては医科の検査が先なんだ。遠回りに感じるかもしれないけど、どのくらい呼吸が止まっているかを知らずに装置だけ作っても、本当に必要な治療につながらないからね。

CPAPとマウスピース、どう違う?

CPAPを装着して眠る様子と、口腔内装置を手にしている様子の比較

睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAP(シーパップ)とマウスピースという選択肢があります。重症度や生活スタイルによって、選ばれる治療が変わります。

CPAPマウスピース(口腔内装置)
どんなもの鼻に装着したマスクから空気を送り、気道を広げる機械下顎を前に出した状態に保つ、歯科で作る装置
主な対象重症例では優先される主に軽症〜中等症。CPAPが続かない場合の選択肢にも
無呼吸を抑える効果一般に高いとされる効果には個人差がある
持ち運び機械と電源が必要小さく、電源も不要
作る・受ける場所医科歯科(医科からの紹介を受けて)
装着後使用状況を医科で確認効果を医科と連携して確認。歯科で噛み合わせも確認
出典:日本睡眠歯科学会、厚生労働省 e-ヘルスネットの情報をもとに作成

無呼吸や低呼吸を抑える効果は、一般にCPAPのほうが高いとされています。とくに重症の場合はCPAPが優先されます。一方、マウスピースには持ち運びやすさや続けやすさという利点があります。

どちらを選ぶかは、重症度と続けられるかどうかを含めて判断されます。CPAPが合わない・続けにくいという方が、医師と相談のうえマウスピースを検討することもあります。ただし、CPAPを自己判断で中止するのは避けてください。

マウスピースで期待できること・限界

口腔内装置を手のひらにのせて見つめる女性と、持ち運びやすさ・定期的な確認などのポイント

マウスピースは万能ではありません。期待できることと、そうでないことを知っておくと、判断しやすくなります。

期待できること

  • いびきや無呼吸の軽減(効果の程度には個人差があります)
  • 電源が不要で、持ち運びしやすい
  • 装置が小さく、旅行や出張にも持っていける

知っておきたい限界と注意点

  • 効果には個人差があります。装着すれば必ずいびきが止まるというものではありません
  • 装着後の再評価が必要です。装着後は紹介元の医科と連携し、必要に応じて睡眠検査を行って効果を客観的に確認します
  • 使い始めは、顎や歯に違和感が出ることがあります。合わない場合は歯科で調整します
  • 長期間の使用では、歯が動いたり噛み合わせが変わったりすることがあります。顎関節の症状、口の乾き、唾液が増えるといった変化がみられることもあります
  • 症状がなくても、定期的に歯科で装置と噛み合わせの確認を受けてください
  • 作れないケースもあります。残っている歯が少ない、顎の関節に不調がある、といった場合は適さないことがあります

減量、飲酒習慣の見直し、横向きで寝る工夫などが、あわせて医師から指導されることもあります。なお、睡眠薬などの処方薬は自己判断で変更せず、処方している医師に相談してください。装置だけに頼らないことが大切です。

しょう
しょう

マウスピースは、作って渡したら終わりじゃないんだ。装着した状態でどのくらい効果が出ているかを、医科でもう一度調べてもらうところまでが治療。ここを省くと、効いているつもりで続けてしまうことになるからね。

歯科では何を確認するの?

紹介を受けて歯科に来ていただいた後は、装置を作れる状態かどうかをお口の中で確認します。主に次のような点を診ます。

  • 残っている歯の本数と位置(装置は歯に支えられるため)
  • 歯周病の有無、歯のぐらつき
  • 顎の関節の状態や、口を開けるときの症状
  • 下顎を前に動かせる範囲
  • 現在の噛み合わせ

「装置を作れるか」と「装置が効くか」は別の話です。お口の状態から作製できると判断されても、効果があるかどうかは装着後に医科で確認することになります。

歯ぎしり用のマウスピースとは別のものです

歯科で作るマウスピースには種類があり、いびき用と歯ぎしり用はまったく別のものです。

歯ぎしり・食いしばり用のナイトガードは、歯や顎を守るために上下どちらかの歯に装着するもので、下顎を前に出す構造ではありません。いびきや無呼吸の改善を目的とした装置ではないため、代わりにはなりません。

すでにナイトガードを使っている方でも、いびきが気になる場合は別に検査と相談が必要です。ナイトガードについてはナイトガードの手入れ方法と交換時期で解説しています。

市販のいびき用マウスピースとの違い

市販品と歯科で作る装置の大きな違いは、お口に合わせて作るかどうかと、経過を診てもらえるかどうかです。

歯科で作る装置は、歯型を取って一人ひとりに合わせて作製し、装着後に調整を重ねていきます。また、顎や歯に負担が出ていないかを確認しながら使うことができます。

市販品は手軽ですが、合わない装置を使い続けると、顎や歯に負担がかかることがあります。また、無呼吸があるかどうかは市販品では分かりません。呼吸が止まっていると指摘された、日中の眠気が強いといった症状がある場合は、市販品だけで様子を見ず、まず医療機関で相談してください。

いびきと歯科に関するよくある質問

Q. いびきが気になります。まず歯科に行けばいいですか?
A. まずは医科(耳鼻咽喉科・呼吸器内科・睡眠外来など)で相談してください。睡眠中の呼吸の状態を検査したうえで、マウスピースが適していると判断されれば、歯科を紹介してもらう流れになります。

Q. マウスピースは保険で作れますか?
A. 医科で睡眠時無呼吸症候群と診断され、歯科への紹介(診療情報提供書)がある場合は保険適用となります。診断に至らない場合や、いびき対策のみを目的とする場合は自費です。費用は装置の種類や医療機関によって異なるため、事前にご確認ください。

Q. CPAPを使っていますが、マウスピースに変えられますか?
A. 自己判断で中止せず、まず処方を受けている医師に相談してください。重症度によってはCPAPを継続したほうがよい場合もあります。

Q. 歯が少ないのですが作れますか?
A. 装置は歯に固定するため、残っている歯の本数や状態によっては作製が難しいことがあります。実際にお口の中を診てからの判断になります。

Q. どこの歯科でも作ってもらえますか?
A. すべての歯科医院が対応しているわけではありません。医科から紹介を受ける際に、対応している歯科医院を案内してもらうとスムーズです。

まとめ|いびきが気になったら、まず検査から

歯科医師が検査から装置の作製までの流れを説明している様子

いびきや無呼吸に対して歯科ができるのは、医科での診断を受けたうえで、マウスピース(口腔内装置)を作ることです。順番としては、医科の検査が先になります。

マウスピースは持ち運びしやすく続けやすい一方、効果には個人差があり、装着後の再評価も欠かせません。CPAPと比べてどちらがよいかは、検査結果と生活に合わせて決めていくものです。

「息が止まっていると言われた」「日中の眠気が強い」という方は、まず医療機関で検査を受けてみてください。

参考文献・出典

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