歯根破折とは?症状・原因と、抜歯になるケース・残せるケース

症状・お悩み

「歯の根が割れているので、抜歯になります」——歯科医院でそう言われて、戸惑ってこのページにたどり着いた方もいるかもしれません。あるいは、治療したはずの歯なのに、同じところの歯ぐきが何度も腫れるのが気になっている方もいるでしょう。

結論から言うと、歯根破折(しこんはせつ)は痛みの強さでは判断できません。まったく痛くないまま進んでいることも多く、逆にひびだけなら経過をみる場合もあります。神経を抜く治療を受けた歯で起こりやすいのも特徴です。

この記事では現役歯科医師の自分が、歯根破折の症状・原因から、どう診断するのか、抜歯になるケースと残せるケース、割れを防ぐためにできることまでを、公的機関と学会の情報にもとづいて解説します。

  1. 歯根破折とは?歯の根が割れた状態のこと
    1. 歯根破折とは、歯の根にひびや割れが生じた状態のこと
    2. 「歯が割れる」には2種類ある
    3. 縦に割れる場合と、横に折れる場合の違い
    4. 歯を失う原因のうち、破折は約2割を占める
  2. 歯根破折はどんな症状が出る?
    1. 噛んだときの鈍い痛み・歯が浮いた感じ
    2. 同じ場所の歯ぐきが何度も腫れる、おできができる
    3. 歯がぐらついてきた
    4. 痛みがまったく出ないこともある
    5. 【早見表】症状と、歯根破折との関連の目安
  3. なぜ歯の根が割れるの?主な原因
    1. ①神経を取った歯は、残っている歯が少ないことが多い
    2. ②歯ぎしり・食いしばりで強い力がかかり続けている
    3. ③土台(コア)の状態や、残っている歯の量
    4. ④ぶつけるなどの外傷
    5. 神経が生きている歯でも割れることはある?
  4. 歯根破折はどうやって診断する?レントゲンだけでは分からない理由
    1. レントゲンは、割れの向きによっては写りにくい
    2. ポケットの深さ・腫れの位置から総合的に判断する
    3. かぶせ物を外して、直接確かめることもある
    4. 受診のとき、これを伝えると診断が早まる
  5. 歯根破折は抜歯しかない?残せるケースと難しいケース
    1. 完全に割れて動いている場合は、抜歯が基本になる
    2. 割れがはっきりしない段階では、経過をみることもある
    3. 残せるかどうかは「折れた位置」と「折れ方」で変わる
    4. 接着して残す治療(意図的再植など)とは
    5. 残せる可能性が下がる条件
    6. 保険になる?自費になる?の考え方
  6. 歯根破折を放置するとどうなる?
    1. 割れ目から細菌が入り、周りの骨が失われていく
    2. 抜いたあとの治療の選択肢がせまくなることがある
  7. 抜歯になったあとの選択肢は?
  8. 歯根破折を防ぐためにできることは?
    1. 神経を取った歯は、残った歯の量に合った守り方をする
    2. 歯ぎしり・食いしばりがあるならナイトガードを検討する
    3. 硬いものを片側だけで噛み続けない
    4. 定期検診で「くり返す腫れ」を見逃さない
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ|歯根破折は「痛みの強さ」ではなく「割れた位置」で判断する
  11. 参考文献・出典

歯根破折とは?歯の根が割れた状態のこと

歯根破折とは歯の根に割れが生じた状態

歯根破折とは、歯の根にひびや割れが生じた状態のこと

歯根破折とは、歯ぐきの中に埋まっている「歯の根(歯根)」に、ひびが入ったり割れたりした状態のことです。

歯は、見えている部分(歯冠)と、歯ぐきの中で骨に支えられている部分(歯根)に分かれます。このうち歯根が割れたものが歯根破折で、鏡で見ても分かりません。ここが、見てすぐ分かる「歯の欠け」との決定的な違いです。

「歯が割れる」には2種類ある

  • 歯冠の破折…歯の頭が欠けた・折れた状態。気づきやすく、詰めたりかぶせたりで対応できることが多い(→歯が欠けたときの対処
  • 歯根の破折…歯の根が割れた状態。見えないため気づきにくく、歯を残せるかどうかの判断が必要になる

この記事で扱うのは後者です。なお、割れたのがかぶせ物そのものだった場合は話が別で、作り直しで対応できることがほとんどです(→ジルコニアやセラミックは割れる?)。

縦に割れる場合と、横に折れる場合の違い

割れる向きによって、その後の見通しが変わります。

  • 縦(垂直)に割れる…噛む力が長年かかって根が縦に裂けるタイプ。神経を取った歯で問題になりやすいのがこちら
  • 横(水平)に折れる…ぶつけた衝撃で根が横向きに折れるタイプ。原因も経過も縦の割れとは別もので、折れた位置によっては固定して様子をみられることもある

歯を失う原因のうち、破折は約2割を占める

歯が割れて抜歯になるのは、珍しいことではありません。全国の歯科医院で行われた抜歯を調べた調査では、抜歯の主な原因は歯周病がもっとも多く、次いでむし歯、そして破折が3番目(17.8%)でした。

抜歯の主な原因割合
歯周病37.1%
むし歯29.2%
破折(歯や歯の根が割れる)17.8%
その他7.6%
埋伏歯5.0%
矯正1.9%
不明1.4%
出典:公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書」(2018年)。全国の歯科医院で1週間に行われた8,003本の抜歯を集計。この「破折」には歯の頭が割れたケースも含まれます。
しょう
しょう

むし歯と歯周病が歯を失う二大原因、というのはよく知られているよね。でも「割れ」が3番目に多いことは、あまり知られていない気がするな。しかも割れは、痛みや腫れが出るまで自分では気づけないことが多いんだ。

歯根破折はどんな症状が出る?

歯根破折で出やすい3つの症状

歯根破折には「これがあれば確実」という決め手の症状がありません。次のようなサインが、単独または重なって出てきます。

噛んだときの鈍い痛み・歯が浮いた感じ

よくみられるサインの一つが、噛んだときの違和感です。割れ目がわずかに動き、歯を支えている組織が刺激されて起こります。ズキズキした強い痛みというより、「噛むと鈍く響く」「歯が浮いた感じがする」という表現になりやすいのが特徴です。ただし、噛むと痛い原因は破折だけではありません(→噛むと歯が痛い原因)。

同じ場所の歯ぐきが何度も腫れる、おできができる

くり返す歯ぐきの腫れは、歯根破折を疑う重要なサインです。割れ目から細菌が入り込み、そこで炎症が続くためです。白いおでき(ニキビのような膨らみ)ができ、つぶれて膿が出て、また膨らむ、をくり返すこともあります。

歯みがきをきちんとしているのに歯の根の部分だけが腫れる場合、その原因としては①根の先に膿の袋がある ②歯根が割れている ③歯根に穴が開いている ④歯根の表面がはがれているの4つが挙げられています。歯周病だけが腫れの原因ではないということです(→歯ぐきから膿が出る原因)。

歯がぐらついてきた

割れた部分が動くようになると、歯全体がぐらつきます。ぐらつきの原因は歯周病がもっとも多いのですが、「1本だけ急にぐらつきだした」ときは破折も候補に入ります(→歯がぐらつく原因)。

痛みがまったく出ないこともある

ここがいちばん大切なところです。歯根破折は、痛みがまったくないまま進むことがあります。

神経を取った歯は、歯の内部から生じる痛みを感じにくくなっています。歯の周りの組織(歯根膜や歯ぐき)の感覚は残っているため、割れたところに炎症が起これば噛んだときの痛みや腫れが出ますが、割れていても症状が乏しいまま経過することがあります。「痛くないから大丈夫」という判断は、この病気に関しては通用しないと考えてください。

しょう
しょう

診療していて本当に多いのが、根が真っ二つに割れているのに、まったく痛みがないケースなんだ。レントゲンをお見せして説明しても、痛くないだけになかなか実感が湧かないという方は多いかな。だから、痛くないことは「問題がない」証拠にはならないんだ。判断は検査の結果でしていきたいな。

【早見表】症状と、歯根破折との関連の目安

こんな症状歯根破折との関連どうする
神経を取った歯で、噛むと鈍く響く・浮く感じが続く関連が考えられる早めに相談
同じ場所の歯ぐきが、治っては何度も腫れる関連が考えられる早めに相談
1本だけ急にぐらついてきたほかの原因も多い(歯周病など)早めに相談
根の治療を何度もやり直しているが治らないほかの原因も多い相談。診断の見直しを
症状はないが、硬いものを噛んで「ミシッ」と感じた可能性はある症状がなくても早めに相談
冷たいものがしみるだけほかの原因が多い別の原因を考える

なぜ歯の根が割れるの?主な原因

歯の根が割れる主な原因4つ

歯根破折の原因は一つではありません。多くは「残っている歯が少ない」ことと「強い力がかかる」ことが重なって起こります。

①神経を取った歯は、残っている歯が少ないことが多い

歯根破折のいちばんの背景が、神経を取った歯であることです。ただし神経を取ったこと自体で歯がもろくなるというより、大きなむし歯や一連の治療によって残っている歯の量が少なくなっていることが主な理由です。

抜歯の主な原因神経を取った歯神経が生きている歯
むし歯33.0%22.4%
歯周病32.7%44.8%
破折26.5%2.8%
その他・矯正・埋伏歯など7.8%29.9%
出典:公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書」(2018年)図34より作成。※これは「抜歯になった歯の、抜歯理由の内訳」です。神経を取った歯の26.5%が割れるという意味ではありません。

神経を取った歯が抜歯になったとき、その理由の約4分の1が破折。一方、神経が生きている歯では2.8%にとどまります。神経を取った歯にとって、割れは特に注意すべきトラブルだと言えます(→根管治療とは)。

②歯ぎしり・食いしばりで強い力がかかり続けている

歯ぎしりや食いしばりによるくり返しの負担は、割れの一因になり得ます。残っている歯が少ない歯にその力が加わり続けると、少しずつひびが入り、やがて割れに進むことがあります。一方で、一度の外傷や硬いものを噛んだことがきっかけになる場合もあります。「ぶつけていないのに歯が割れる」背景として、かみ合わせが悪く歯に強すぎる負担がかかっていたケースが公的にも挙げられています(→歯ぎしりの原因日中の食いしばり(TCH)のやめ方)。

③土台(コア)の状態や、残っている歯の量

神経を取ったあと、どう治したかも関係します。神経を取った歯は、多くの場合「コア」と呼ばれる土台を入れてからかぶせ物をします。ここで押さえておきたいのが、土台が硬すぎると、噛む力が根の一点に集中しやすくなるという考え方です(土台の選び方は後述します)。

④ぶつけるなどの外傷

転倒・衝突などの強い衝撃でも、根は折れます。この場合は横向きに折れることが多く、噛む力による縦の割れとは経過が異なります。ぶつけて歯がぐらついたときは、まずレントゲンで確認が必要です。

神経が生きている歯でも割れることはある?

あります。ただし頻度は低くなります。大きな詰め物が入っている歯や、強い歯ぎしりがある方では、神経が生きていても割れることがあります。

歯根破折はどうやって診断する?レントゲンだけでは分からない理由

レントゲンに写る割れと写らない割れ

歯根破折は、歯科医師にとっても診断が難しい部類に入ります。「たぶん割れていると思う」という説明に不安を感じた方に向けて、なぜ言い切れないのかを説明します。

レントゲンは、割れの向きによっては写りにくい

レントゲンは、割れ目の向きとエックス線の方向が一致したときにいちばんよく写ります。割れ目が横向きに走っていると線として写らないことがあり、割れたばかりで隙間が開いていない段階でも画像に変化が出ません。「レントゲンで異常なし=割れていない」とは言い切れないのは、このためです。

ポケットの深さ・腫れの位置から総合的に判断する

そこで、画像以外の情報を組み合わせます。判断材料になるのは次のようなものです。

  • 1か所だけ深い歯周ポケット…全体は浅いのにその歯の一点だけ深い場合、割れ目に沿って細菌が入り込んでいる可能性がある(→歯周ポケットの数値の意味
  • 歯ぐきの腫れやおできの位置…根の先ではなく根の横(中ほど)に出ている場合は、割れを疑いやすい
  • CT(歯科用3次元エックス線)…立体的に撮ることで、周りの骨の変化や割れ目を確認できる場合がある。ただし根に詰めた材料や金属の土台があると画像が乱れ、CTでも確定できないことがある
  • 噛んだときの反応…特定の方向で噛んだときだけ痛むかどうか

かぶせ物を外して、直接確かめることもある

最終的には、かぶせ物や土台を外して割れ目を直接見て確かめる場合があります。ここではじめて確定することも、逆に外してみたら割れていなかったということもあります。診断に段階を踏むのは、慎重に判断しているためだと考えてください。

しょう
しょう

「割れているかもしれません」という説明は、はっきりしなくて不安だよね。ただ、歯根破折はレントゲン1枚では確定できないことが本当に多いんだ。時間をかけて確かめるのは、抜かなくていい歯を抜かないためでもあるから、少し待ってもらえるとありがたいな。

受診のとき、これを伝えると診断が早まる

患者さん側から伝えてもらえると、診断に近づきやすい情報があります。

  • その歯の治療歴…神経を取ったか、いつごろか、かぶせ物をやり直したことがあるか
  • 腫れをくり返しているか…「前も同じところが腫れて、抗菌薬で治まった」は特に重要
  • 症状が出るタイミング…噛んだときか、何もしなくても痛むか
  • 歯ぎしり・食いしばりを指摘されたことがあるか
  • 硬いものを噛んで「ミシッ」と感じた瞬間があったか

歯根破折は抜歯しかない?残せるケースと難しいケース

歯根破折で歯を残せるかを分ける4つの要素

結論から言うと、歯根破折は「必ず抜歯」でも「必ず残せる」でもありません。割れ方・割れた位置・残っている歯の量によって判断が変わります。

完全に割れて動いている場合は、抜歯が基本になる

根が1本の歯(前歯や小臼歯)で、根が完全に割れて破片が動いている場合は、抜歯が基本の判断です。割れ目に細菌が入り続けるため炎症が治まらず、支えている骨が失われていくためです。

ただし、根が複数ある奥歯では、条件によって割れた根だけを取り除き、残りの根で歯を使い続けられる場合があります。同じ「割れた」でも、歯の場所によって選択肢が変わります。

割れがはっきりしない段階では、経過をみることもある

破折線の位置や深さがはっきりせず、症状も周りの組織の異常もない場合は、追加の検査をしたり、噛み合わせを調整しながら慎重に経過をみたりすることがあります。ただし、根が縦に割れていると確認された場合は、歯の種類や感染の範囲に応じた処置が必要になります。

残せるかどうかは「折れた位置」と「折れ方」で変わる

同じ「根が折れた」でも、どこで折れたかで見通しは大きく変わります。ぶつけて折れたケースでは、根の先に近いところで折れていれば残せる可能性があり、固定して経過をみます(歯根破折では2か月程度の固定)。一方、歯ぐきに近いところで折れていたり、斜めに折れていたりする場合は、抜歯になる可能性があると公的な解説でも示されています。

噛む力による縦の割れでも考え方は共通で、割れ目が歯ぐきに近い側まで開いているほど、残すのは難しくなります。清掃も封鎖もできない場所に、細菌の入り口が残ってしまうからです。

接着して残す治療(意図的再植など)とは

割れた歯を接着して残そうとする治療法もあります。大きく分けて、口の中で割れ目を接着する方法と、一度歯を抜いて、口の外で接着してから元に戻す方法があり、後者は「意図的再植」と呼ばれる考え方に含まれます。

意図的再植そのものは公的な解説サイトでも紹介されていますが、同じ解説の中で「必ずうまくいくというわけではなく、最後の手段」であることが、はっきり書かれています。さらに、割れた歯を接着して戻す治療は標準的な治療として確立しているとは言えず、長期の経過を裏づける質の高い研究も十分ではありません。歯根が溶ける、骨とくっついてしまう、再び割れる、結局抜くことになる、といった可能性があります。

残せる可能性が下がる条件

次のような場合は、接着による保存も難しくなります。

  • 割れ目が歯ぐきの深く、骨のなかまで達している
  • 複数の方向に割れている(バラバラになっている)
  • 割れてから時間がたち、周りの骨がすでに大きく失われている
  • 残っている歯の量が少なく、接着できてもかぶせ物を支えられない
  • その歯に強い歯ぎしりの力がかかり続けている

保険になる?自費になる?の考え方

金額より先に、「その治療が公的な保険の対象として定められているか」を確認するのが確実です。厚生労働省が定める歯科の点数表では、一度抜いて元に戻す「歯の再植術」が保険の対象として決められています。ただし対象は①外傷で脱臼した歯 ②根の先に病巣があり、解剖学的な理由から歯根端切除手術が難しい場合の2つで、割れた歯を接着して戻す治療は、この規定には含まれていません。

そのため、接着による保存治療は自由診療として扱われる場合があります。治療の内容・費用・適応・うまくいかなかった場合にどうするかを、受ける前に必ず医療機関へ確認してください。「抜歯を回避できる」という説明だけで決めないことが大切です。

歯根破折を放置するとどうなる?

歯根破折を放置したときの3段階の変化

割れ目から細菌が入り、周りの骨が失われていく

歯根破折を放置すると、割れ目が細菌の通り道になります。そこで炎症が続くと、歯を支えている骨が少しずつ失われていきます。腫れが出たり引いたりをくり返すのは、炎症が消えたわけではなく、膿の出口ができたりふさがったりしているためです。

抜いたあとの治療の選択肢がせまくなることがある

ここが放置のいちばんの問題です。入れ歯もブリッジもインプラントも、周りの骨と歯ぐきの状態が土台になります。骨が大きく失われてから抜歯すると、その後どの治療を選ぶにしても条件が悪くなり、結果として選べる選択肢が減ってしまうことがあります。痛みは進行の程度を教えてくれないので、「痛くないから様子をみる」のは避けたいところです。

抜歯になったあとの選択肢は?

抜歯になったら、噛む機能をどう回復するかを考えます。選択肢は入れ歯・ブリッジ・インプラントの大きく3つで、残っている歯の状態や骨の量によって適した方法は変わります。1本抜けたままにすると、向かいの歯が伸びたり隣の歯が傾いたりして、あとの治療が難しくなります。詳しくは関連記事をご覧ください(→歯を失った後の選択肢抜歯後の経過歯を抜いたまま放置するとどうなる)。

歯根破折を防ぐためにできることは?

歯根破折を防ぐナイトガードと定期検診

いちばん現実的な予防は、「神経を取った歯を、力から守ること」です。

神経を取った歯は、残った歯の量に合った守り方をする

神経を取った歯の治し方は、歯の場所と残っている歯の量で決まります。歯の壁が薄くなっている奥歯では、噛む面を覆う修復が検討されます。逆に歯が十分に残っていれば、詰め物での修復が選ばれることもあります。残っている歯が少ないと感じているなら、覆う修復が必要かどうかを相談してみてください。

土台(コア)の材料には金属とレジンがあり、ファイバーで補強したレジンの土台もあります。曲げ強度が金属より歯根に近く、歯根と一体化して破折を防ぐはたらきがあると説明されています。ただし材料だけで割れを防げるわけではありません(→詰め物・被せ物の選び方)。

しょう
しょう

神経を取ると痛みが消えるから、治療が終わった気持ちになりやすいよね。でも本当は、そこからが長いお付き合いのはじまりなんだ。残っている歯の量に合わせて、噛む力を分散させておく。そのひと手間が、歯を長く使うために大切なんじゃないかな。

歯ぎしり・食いしばりがあるならナイトガードを検討する

ナイトガードは、歯ぎしりによる接触から歯やかぶせ物を守る目的で使われます。歯ぎしりそのものを止めたり、歯根破折を確実に防いだりする装置ではありませんが、神経を取った歯や大きなかぶせ物が多い方は、検討する価値があります(→ナイトガードの効果と費用)。

硬いものを片側だけで噛み続けない

氷や硬いせんべい、ナッツ類をいつも同じ側で噛む習慣があると、特定の歯に負担が集中します。神経を取った歯がある側では、特に注意してください。

定期検診で「くり返す腫れ」を見逃さない

定期検診では、自分では気づいていない歯ぐきの腫れ、1か所だけ深いポケット、画像上の骨の変化などが見つかることがあります。ただし、初期の割れを必ず見つけられるわけではありません。それでも、症状が出にくい病気だからこそ、定期的に見てもらう意味は大きいと考えています(→歯科検診は何をする?)。

よくある質問(FAQ)

Q. 歯根破折は自分で見つけられますか?
A. 自分で確かめるのは難しいのが実際です。ただし「同じところが何度も腫れる」「神経を取った歯で噛むと鈍く響く」は気づけるサインなので、心当たりがあれば相談してください。

Q. レントゲンで異常なしと言われましたが、割れていないと考えていいですか?
A. 言い切ることはできません。割れ目の向きや隙間の広さによっては写らないことがあります。症状が続く場合は、CTでの確認や、かぶせ物を外しての確認が検討されます。

Q. 割れた歯を接着すれば、元どおり使えますか?
A. 元どおりになるとは言えません。割れた位置や本数、残っている歯の量によって適応が限られます。うまくいかない場合があることも含めて、事前に説明を受けてください。

Q. 抜歯と言われました。セカンドオピニオンを受けてもいいですか?
A. 問題ありません。その際は、今の歯科医院で撮ったレントゲンやCTを持参できるか確認しましょう。判断の分かれ目は割れた位置と残っている歯の量なので、画像があるほうが正確な意見をもらえます。

Q. 神経を取った歯は、いずれ必ず割れるのですか?
A. 必ずではありません。強い力がかかっていなければ、長く使えている歯もたくさんあります。割れやすい条件が重なったときに起こりやすい、と考えてください。

Q. 前歯と奥歯で、割れやすさに違いはありますか?
A. 噛む力が強くかかる奥歯では、噛む力による割れが問題になりやすい傾向があります。一方、前歯はぶつけたときの外傷を受けやすい場所です。原因の入り口が違うと考えると分かりやすいでしょう。

まとめ|歯根破折は「痛みの強さ」ではなく「割れた位置」で判断する

歯科医師が歯根破折について患者に説明している
  • 歯根破折とは、歯ぐきの中にある歯の根にひびや割れが生じた状態のこと
  • 抜歯の原因の17.8%が破折で、歯周病・むし歯に次いで3番目に多い
  • 神経を取った歯で特に問題になりやすい(抜歯理由に占める破折は、神経を取った歯で26.5%、神経が生きている歯で2.8%)
  • 痛みが出ないことも多く、「痛くないから大丈夫」は通用しない
  • レントゲン1枚では確定できず、ポケットの深さ・腫れの位置・CTなどから総合的に判断する
  • 残せるかどうかは割れた位置と折れ方で変わる。奥歯では割れた根だけを取れる場合もある
  • 予防の中心は、残っている歯の量に合った治し方をして、歯ぎしりの力から守ること

歯根破折は、気づいたときには進んでいることが多いトラブルです。だからこそ、くり返す歯ぐきの腫れや、噛んだときの小さな違和感を、そのままにしないでほしいと思います。気になる症状があるときは、早めにかかりつけの歯科医院で相談してください。

参考文献・出典

症状・お悩み
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この記事を書いた人
しょう

現役歯科医師(臨床経験10年以上)。むし歯・歯周病の治療から、ジルコニア・セラミックなど自費の補綴治療まで幅広く診療しています。「もっと早く知っていれば」を減らせるよう、診療室で患者さんに話すような内容を、臨床経験と公的機関・学会の情報をもとにわかりやすく発信しています。

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