口呼吸の治し方|原因別の対処法とやってはいけない方法を歯科医師が解説

予防・セルフケア

「朝起きると口の中がカラカラ」「気づくと口が半開きになっている」——そんな心当たりはありませんか。口で呼吸するクセは自分では気づきにくく、指摘されて初めて知る方も少なくありません。

口呼吸が続くと口の中が乾き、唾液が持つ「お口を守る力」が働きにくくなります。その結果、虫歯や口臭のリスクが高まる可能性があります。

この記事では、現役歯科医師の自分が、口呼吸のセルフチェック・原因の見極め方・原因別の治し方を解説します。あわせて、よく話題になる「口テープ」を使うときの注意点も説明します。

口呼吸とは?鼻呼吸と何が違うの?

鼻呼吸と口呼吸で空気の通り道が違うことを示した比較イラスト

ここでいう口呼吸とは、安静時や睡眠時にも習慣的に口から呼吸している状態を指します。運動中や会話のときに口から呼吸するのは自然なことで、問題になるのは「ふだんから口で呼吸している」状態です。鼻には空気を通すだけでなく、体を守るいくつもの働きがあります。

鼻には「フィルター」と「加湿」の働きがある

鼻を通る空気は、ほこりや異物がろ過され、温められ、湿り気を与えられてから体の奥へ届きます。鼻毛や粘液、鼻の中の複雑な構造が、そうした働きを担っています。

口呼吸だと、その働きが使えない

口で呼吸すると、こうした鼻のはたらきを経由せずに空気が入ってきます。さらにお口の中では、呼気と吸気が出入りするたびに水分が奪われます。日本口腔外科学会も、鼻炎などの鼻の病気やクセで口呼吸をすると、唾液が蒸発して口が渇くと説明しています。

自分は口呼吸?セルフチェック

起床時に口の乾きを感じている女性と、口呼吸のサインを表すアイコン

口呼吸は無意識のうちに起きているため、自分では気づきにくいのが特徴です。次のようなサインがないか確認してみてください。

こんなサインがあれば口呼吸かも

  • 朝起きたとき、口の中やのどがカラカラに乾いている
  • 気づくと口が半開きになっている、と指摘されたことがある
  • 唇がよく乾く・荒れる
  • いびきをかくと言われる
  • 鼻がつまっていることが多い
  • 口臭が気になる

このチェックは診断ではなく、気づくためのきっかけです。あてはまる項目が多い場合は、この記事の後半で原因を見極めてみてください。

寝ている間の口呼吸に気づくには

日中は鼻で呼吸できていても、寝ている間だけ口呼吸になっている方もいます。起床時に口やのどが乾いている、唇が乾燥している、朝から口臭が気になる、といった変化は、就寝中の口呼吸を疑うサインです。家族から「口を開けて寝ている」「いびきをかいている」と言われたことがあれば、それも手がかりになります。

しょう
しょう

口呼吸って、本人にはなかなか自覚がないんだ。唇の乾き具合や前歯のまわりの汚れのつき方が、手がかりになることもある。家族に「口が開いているよ」と言われたことがあるなら、それは大事なヒントだよ。

口呼吸が続くとどうなる?お口への影響

乾いた歯と歯ぐきを中心に、虫歯・歯周病・口臭・歯並びへの影響を示した図

口呼吸が続くと、お口の中が乾き、唾液の守る働きが十分に発揮されにくくなります。その結果、次のような影響が出やすくなります。

虫歯・歯周病のリスクが高まる

唾液には、汚れを洗い流す・細菌の活動を抑える・酸を中和する・初期脱灰部の再石灰化を促すといった働きがあります。口の中が乾くとこれらが働きにくくなり、虫歯ができやすい状態になります。また、歯垢が残りやすくなるため、歯周病にも注意が必要です。とくに前歯の表側は、口が開いていると乾きやすい場所です。

口臭が強くなりやすい

お口が乾くと細菌が増えやすくなり、においの原因となるガスが発生しやすくなります。朝起きたときに口臭が気になりやすいのは、睡眠中に唾液が減るためです。そこに口呼吸が重なると、乾燥はさらに進みます。詳しくは口臭の原因と対策で解説しています。

歯並びに関係することもある

とくに成長期のお子さんでは、口が開いた状態が続くことと歯並びの関係が指摘されています。唇や舌の力のバランスは、歯の位置に影響すると考えられているためです。お子さんの「お口ポカン」が気になる場合は、歯科で相談してみてください。

口呼吸の原因は?まず見極めることが大切

鼻の問題・クセ・唇を閉じる力・歯並びという口呼吸の4つの原因

口呼吸の治し方は、原因によって変わります。「鼻が通らない」のか「クセで口が開く」のかで、やるべきことがまったく違うためです。まずは自分がどれに当てはまるかを考えてみましょう。

①鼻の問題(鼻炎・花粉症・副鼻腔炎など)

鼻がつまっていれば、口で呼吸するしかありません。アレルギー性鼻炎、花粉症、副鼻腔炎、鼻の構造的な問題などが背景にあることがあります。この場合、口を閉じる練習をしても根本的な解決になりません。

②口を開けるクセ

鼻は通っているのに、習慣として口が開いてしまっているケースです。子どものころの鼻づまりがきっかけで、鼻が治った後もクセだけ残ることがあります。考えごとをしているとき、スマホを見ているときなど、無意識に口が開いていないか観察してみてください。

③口のまわりの機能(唇を閉じる力)

唇を閉じ続ける力や、舌・口唇の機能が十分でないと、口が開きやすくなることがあります。これは大人と子どもで背景が異なります。成長期のお子さんではお口の機能の発達が関係することがあり、大人では長年のクセと重なっていることがあります。

④歯並び・骨格の影響

前歯が前に出ている、上下の前歯がかみ合わないなど、歯並びの状態によって唇が閉じにくいことがあります。この場合は、矯正治療を含めた相談が選択肢になります。

しょう
しょう

ここがいちばん大事なところなんだ。鼻がつまっているのに口を閉じようとしても、苦しいだけで続かない。「鼻がつまりやすい」という自覚がある人は、まず耳鼻科で診てもらうのが近道だよ。

口呼吸は何科に相談すればいい?

気になる症状によって、相談先が変わります。目安は次のとおりです。

気になる症状・状態相談先の目安
鼻づまりが続く、鼻炎・花粉症・副鼻腔炎がある耳鼻咽喉科
強いいびき、睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気睡眠時無呼吸の検査ができる医療機関(呼吸器内科・耳鼻咽喉科など)
唇が閉じにくい、歯並びやかみ合わせが気になる歯科・矯正歯科
口の乾き、虫歯・歯周病・口臭が気になる歯科
子どもの「お口ポカン」が気になる歯科(鼻づまりがあれば耳鼻咽喉科もあわせて)

複数あてはまる場合は、まず鼻づまりや強いいびきなど、呼吸そのものに関わるものから相談するとよいでしょう。なお、検査でいびきや無呼吸の治療が必要と判断された場合、歯科ではいびきのマウスピース(口腔内装置)を作ることがあります。

口呼吸の治し方|原因別の対処法

鼻の通りの確認・日中の意識づけ・口まわりの体操という3つのステップ

口呼吸を治す第一歩は、「鼻が通るようにすること」です。そのうえで、クセや筋力への対策を組み合わせていきます。

まず鼻が通るかを確認する(耳鼻科の受診)

鼻づまりが続いている場合は、耳鼻咽喉科で相談しましょう。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療で鼻が通るようになると、それだけで口を閉じやすくなることがあります。「昔から鼻がつまりやすい」と慣れてしまっている方ほど、一度診てもらう価値があります。

日中の意識づけと舌の位置

鼻が通っているなら、日中に「口を閉じる」ことを意識するのが基本です。あわせて意識したいのが舌の位置です。安静時は、舌先が上の前歯の少し後ろに触れ、舌全体が上あご側に収まっている状態が目安とされています。ただし、舌の位置だけで口呼吸かどうかを判断することはできません。

スマホを見ているとき、パソコン作業中、テレビを見ているときなど、口が開きやすい場面を見つけて、そのタイミングで気づけるようにするのがコツです。

口のまわりの筋肉を動かす

唇や舌を動かす体操が紹介されています。代表的なものに「あいうべ体操」があり、「あー」「いー」「うー」と口を大きく動かし、最後に「べー」と舌を出す動きを繰り返します。口のまわりや舌の筋肉を意識して動かすのがねらいです。

ただし、こうした体操だけで口呼吸が改善するとは限りません。鼻づまりや歯並びなど、ほかの原因を確認したうえで、補助的に行う方法と考えましょう。顎や首に痛みがある方、顎の関節に不調がある方は、無理をせず中止してください。

口テープを使うときの注意点

就寝中の口呼吸対策として口にテープを貼る方法がありますが、その効果と安全性についての研究はまだ限られています。手軽に見える方法ですが、使う前に確認したいことがあります。

  • 鼻がつまっている場合は使わない:鼻が通らない状態で口をふさぐのは危険です。まず鼻の治療を優先してください
  • いびきや呼吸の停止を指摘されたことがある場合も使わない:睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ひどいいびきや睡眠中の呼吸停止がある場合は、速やかに専門の医療機関で検査・治療を受けることが大切とされています
  • 肌がかぶれる、苦しさを感じる場合は中止する

鼻がしっかり通っているかどうかは、自分だけでは正確に判断しにくいものです。口テープを使ってみたいと考えている方は、自己判断で始めず、歯科や医科で相談してから検討しましょう。

しょう
しょう

口テープは手軽だから飛びつきたくなるけど、順番を間違えると危ないんだ。鼻が通っていない人、いびきや無呼吸を指摘されている人は使わないでほしい。そもそも効果についての研究もまだ少ないから、自己判断で始めるのはやめた方がいいかな。

歯並び・かみ合わせが関係する場合

唇が閉じにくい歯並びが背景にある場合は、歯科での相談が必要です。矯正治療によって唇を閉じやすくなることがあります。まずはかかりつけの歯科医院で、現在の状態を診てもらうとよいでしょう。

乾燥してしまったお口のケアも大切

口呼吸を改善していく間も、乾いたお口を守るケアは続けましょう。こまめな水分補給、よく噛んで食べること、就寝時の加湿などが役立ちます。乾きが強い場合は、口腔保湿剤を使う方法もあります。

お口の乾き全般についてはドライマウスの原因と対策で、唾液の働きについては唾液が少ないとどうなる?で詳しく解説しています。

しょう
しょう

長年の呼吸のクセは、数日で変わるものじゃないんだ。焦らず、まず鼻を通すこと、日中に気づくこと、この2つから始めてほしい。そのあいだも、乾いた口を守るケアは続けておこう。

口呼吸に関するよくある質問

Q. 口呼吸は自分で治せますか?
A. 原因によります。クセや口まわりの機能が関係している場合は、原因を確認したうえで、意識づけや専門家の指導による口腔筋機能療法が選択されることがあります。一方、鼻づまりや歯並びが背景にある場合は、耳鼻科や歯科での治療が必要です。まず原因を見極めることが大切です。

Q. 寝ている間だけ口呼吸になっているようです。どうすればいいですか?
A. 室内の加湿などで、乾燥による不快感をやわらげる方法があります。ただしこれは口呼吸の原因そのものを治す方法ではありません。いびきや睡眠中の呼吸停止を指摘されたことがある場合は、自己流の対策より先に医療機関で相談してください。

Q. 口テープは安全ですか?
A. 鼻がしっかり通っていることが前提です。鼻がつまっている方、いびきや無呼吸を指摘されている方には適しません。使う前に、鼻の状態と睡眠中の呼吸について確認しておく必要があります。

Q. あいうべ体操はどのくらい続ければ効果が出ますか?
A. 変化の出方には個人差があり、期間を一律に示すことはできません。また、こうした体操だけで口呼吸が改善するとは限らないため、鼻づまりや歯並びなど他の原因も確認したうえで、補助的に取り入れるものと考えてください。痛みが出る場合は中止しましょう。

Q. 子どもの口がいつも開いています。様子を見ていいですか?
A. 成長期は歯並びやお口の機能が発達する時期のため、早めに歯科で相談することをおすすめします。鼻づまりが背景にある場合は、耳鼻科での治療が必要になることもあります。

まとめ|原因に合った方法で、鼻呼吸へ

歯科医師が原因別の相談先を説明している様子

口呼吸の改善では、口を無理に閉じようとする前に、鼻づまり・睡眠時の呼吸・歯並び・お口の機能のどこに原因があるかを見極めることが大切です。原因によって、進む道が変わるためです。

とくに口テープのように手軽に見える方法ほど、使う前の確認が欠かせません。鼻が通っているか、いびきや無呼吸の心配がないか。ここを飛ばさないでください。

口の乾きが続くとお口のトラブルにつながります。気になる方は、かかりつけの歯科医院で相談してみてください。

参考文献・出典

予防・セルフケア
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この記事を書いた人
しょう

現役歯科医師(臨床経験10年以上)。むし歯・歯周病の治療から、ジルコニア・セラミックなど自費の補綴治療まで幅広く診療しています。「もっと早く知っていれば」を減らせるよう、診療室で患者さんに話すような内容を、臨床経験と公的機関・学会の情報をもとにわかりやすく発信しています。

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