舌磨きで口臭は防げる?正しいやり方とやりすぎのリスク

予防・セルフケア

「歯は毎日磨いているのに、口臭が気になる」「舌が白いのはこのままでいいの?」と不安になっていませんか。じつは口臭の大部分は口の中に原因があり、その中心が舌の表面につく白い汚れ=舌苔(ぜったい)です。

この記事では、現役歯科医師の自分が、舌磨きの正しいやり方を5ステップでわかりやすく解説します。頻度やタイミング、やりすぎのリスク、道具の選び方まで、この記事だけで舌ケアの基本がひととおりわかります。口臭の原因を全体的に知りたい方は、口臭の原因と対策の記事もあわせてどうぞ。

舌苔(ぜったい)とは?舌が白くなる原因

舌の表面を虫眼鏡で拡大し、突起のすき間に汚れがたまっている様子

舌苔とは、舌の表面につく白っぽい苔(こけ)状の汚れのことです。細菌や、はがれた粘膜のカス、食べかすなどが舌のこまかい凹凸にたまったもので、誰にでも多かれ少なかれ付着しています。

舌苔の正体は細菌と汚れのかたまり

舌の表面は、じゅうたんのようにこまかい突起(舌乳頭)でおおわれています。この凹凸のすき間に細菌や汚れが入り込み、たまったものが舌苔です。

舌苔は健康な人にもみられ、つく量には個人差があります。ただし、白い部分が分厚い、こすっても取れない、痛みやただれをともなうといった場合は、別の原因が隠れていることもあります。気になるときは歯科医院で相談しましょう。

なぜ舌苔が口臭の原因になるのか

舌苔の中の細菌が、においのもとになるガスを作り出すからです。口臭の大部分(80%以上)は口の中で発生したガスによるもので、その主な原因は舌苔と歯周病です。この2つの中でも、舌苔から作られるにおいの量のほうが多いといわれています。

つまり、口臭対策を考えるなら、歯磨きだけでなく「舌のケア」を無視できないということです。

舌苔がつきやすい人の特徴

次のような条件があると、舌苔は厚くなりやすい傾向があります。

  • 口の中が乾燥しやすい(口呼吸・マスク生活・加齢など)
  • 唾液の量が減っている(薬の影響など)
  • やわらかいものばかり食べていて、舌をあまり動かさない

唾液には口の中を洗い流す働きがあるため、乾燥すると細菌が増えて舌苔がつきやすくなります。

舌磨きで口臭は防げる?

生理的口臭と病的口臭の違いを対比した図と、口元を気にする女性

結論から言うと、舌苔が主な原因となる「生理的口臭」には、舌磨き(舌清掃)が効果的とされています。厚生労働省の情報サイト(e-ヘルスネット)でも、生理的口臭の予防には歯磨きに加えて舌清掃を行い、舌を清潔に保つことが最も効果的と説明されています。

ここで大切なのが、口臭には2つのタイプがあるということです。

  • 生理的口臭とは、起床時や空腹時などに誰にでも起こる一時的な口臭のことです。舌苔が主な原因になります。
  • 病的口臭とは、歯周病や虫歯など、口の中や体の病気が原因で起こる口臭のことです。

舌磨きが力を発揮するのは、前者の生理的口臭です。歯周病などが原因の病的口臭は、舌磨きだけでは改善しません。原因に応じた治療が必要になります。

しょう
しょう

歯磨きは毎日していても、舌磨きまで習慣になっている人はまだ少ないんだ。口臭が気になって歯磨きをがんばっていても、舌のケアは手つかず……というのはよくある話だよ。まずは舌にも汚れがたまるということを知ってほしいな。

期待できる効果は「口臭のもとを減らす」こと

舌磨きの目的は、においのもとを作る細菌のすみか=舌苔を減らすことです。多くの人の口臭は早朝がいちばん強いといわれています。就寝中は唾液が減り、細菌が増えやすくなるためと考えられています。だからこそ、朝の舌磨きが理にかなっています。

一方で、口臭の原因は舌苔だけではありません。自分の口臭がどちらのタイプに近いか、次の表で確認してみてください。

 舌磨きで軽くなりやすい口臭歯科医院で相談したい口臭
タイプ生理的口臭病的口臭
主な原因舌苔歯周病・虫歯など
起こりやすいとき起床時・空腹時など一時的時間帯に関係なく続く
対処歯磨きに舌磨きを加えるセルフケア原因に応じた歯科治療

※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」「口臭の治療・予防」をもとに作成

舌磨きを続けても口臭が気になる場合は、病的口臭のほうを疑ってみる必要があります。

やりすぎは逆効果になる理由

舌磨きは「やればやるほど良い」ものではありません。舌の表面はデリケートなので、1日に何度も磨いたり強くこすったりすると、舌の粘膜を傷つけ、痛みや出血を招くおそれがあります。

舌磨きの正しいやり方【5ステップ】

舌磨きの手順を4コマで示した図。奥から手前へ一方向に動かす

基本は「鏡を見ながら、奥から手前に、やさしく」です。次の5ステップで行いましょう。

  • ステップ1:鏡の前で舌を大きく前に出し、舌苔のつき方を確認する
  • ステップ2:舌ブラシ(または毛先のやわらかい歯ブラシ)を水でぬらす
  • ステップ3:鏡で見える範囲のいちばん奥に、ブラシを軽く当てる
  • ステップ4:奥から手前へ、一方向にやさしく引く(往復させない)
  • ステップ5:ブラシを水で洗い、汚れがつかなくなるまで数回くり返す

力を入れすぎないことが何より大切です。「こする」というより「なでて汚れを運び出す」イメージで行いましょう。

頻度とタイミングは「1日1回・起床時」が基本

舌磨きの回数は、1日1回・朝起きたときで十分です。それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。寝ている間に細菌が増え、口臭は早朝がいちばん強くなるので、朝に1回リセットするのがもっとも効率的です。

項目基本ルール
頻度1日1回が基本
タイミング朝起きたとき
動かし方奥から手前へ一方向
力加減力を入れすぎない(やさしくなでる程度)
道具専用の舌ブラシがより効果的
やめるべきとき舌に傷や口内炎(潰瘍)があるとき

※出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」をもとに作成

オエッとなる(嘔吐反射)ときのコツ

舌の奥にブラシを入れるとオエッとなりやすい方は、息を数秒間止めながら行うと嘔吐反射が出にくくなります。それでもつらい場合は、無理に奥まで入れず、届く範囲だけをやさしく磨くところから始めましょう。

舌磨きの道具はどれがいい?

舌ブラシ・ヘラタイプ・歯ブラシを見比べる男性

いちばんのおすすめは、専用の「舌ブラシ」です。毛先のやわらかい子ども用歯ブラシなどでも代用できますが、専用の舌ブラシを使うとより効果的とされています。

舌ブラシ・歯ブラシ・そのほかの違い

  • 舌ブラシ:舌の清掃用に作られていて、舌苔を効率よく取り除きやすい。ブラシタイプとヘラタイプがある
  • 毛先のやわらかい歯ブラシ:代用は可能。ただし歯を磨くための道具なので、力加減にはより注意したい
  • マウスウォッシュ(洗口液):すすぐだけでは舌苔は落としきれない。あくまで補助と考える(詳しくはマウスウォッシュの効果の記事へ)
しょう
しょう

ふつうの歯ブラシで舌をゴシゴシ磨くのは、あまりおすすめしないんだ。歯ブラシはあくまで歯を磨くための道具だからね。舌のケアを続けるなら、舌専用のものを選んだほうが力の加減もしやすいよ。

歯磨き粉はつけなくていい

舌磨きに歯磨き粉は不要です。水でぬらしたブラシだけで行えます。e-ヘルスネットで紹介されている手順も、舌ブラシを水で洗いながら舌苔を落としていく方法です。泡が立つと磨けた感覚は得られますが、汚れが落ちたかどうかは、ブラシの先についた舌苔で確認するほうが確実です。

やってはいけないNG舌磨き

正しい舌磨きとNGな舌磨きを○×で比較した図

舌磨きで気をつけたいのは、回数と力加減です。次のような磨き方は避けましょう。

  • ゴシゴシ強くこする:舌の粘膜を傷つけ、痛みや出血につながるおそれがある
  • 1日に何度も磨く:基本は1日1回。それ以上行うと粘膜を傷つけるおそれがある
  • ブラシを往復させる:奥から手前へ、一方向に動かす
  • 白さが完全になくなるまで磨く:取り切ろうとすると磨きすぎになりやすい
  • 舌に傷や口内炎があるのに磨く:傷や潰瘍があるときは舌清掃を中止する
しょう
しょう

口臭が気になると、つい回数を増やしたくなるよね。でも舌磨きは、増やしたぶんだけ効果が上がるものではないんだ。むしろ舌が赤くなってヒリヒリしてしまうこともあるんだ。

舌苔が取れない・すぐつくのはなぜ?

正しく磨いても舌苔がすぐ厚くなる場合、「つきやすい環境」のほうに原因があります。磨く回数を増やすのではなく、原因に目を向けましょう。

口の乾燥・口呼吸

口の中が乾燥すると細菌が増えやすくなり、口臭も強くなりやすくなります。口呼吸のクセ、マスク生活、いびきなどがあると舌は乾きやすくなります。こまめな水分補給や、鼻呼吸を意識することが舌苔対策にもつながります。口の乾きが続く場合は、ドライマウスの原因と対策もあわせてご覧ください。

薬や口の乾燥の影響

服用している薬の影響で唾液が減り、口が乾きやすくなっている場合があります。舌苔のつき方は、時間帯や体の状態によって変化することもあります。磨き方を見直しても改善しないときは、磨く回数を増やすのではなく、乾燥の原因のほうに目を向けてみましょう。

しょう
しょう

何度磨いてもすぐ白くなるときは、磨き方より「乾燥」のほうに目を向けてみてほしいな。お薬の影響で唾液が減っていることもあるからね。回数を増やすより、まずは口の中を潤す工夫から試してみるといいよ。

歯科医院に相談したほうがよいケース

次のような場合は、セルフケアだけで様子を見ず、歯科医院で相談しましょう。

  • 正しい舌磨きを続けても、口臭や厚い舌苔が改善しない
  • 舌に痛み・しみる感じ・ただれがある
  • 舌苔が黄色や黒っぽいなど、色の変化が気になる
  • 口の乾燥が強く、日常生活でも気になる

口臭の原因が歯周病などにある場合、舌磨きだけでは解決しません。定期的なチェックもかねて、歯科検診で相談するのがおすすめです。

舌磨きに関するよくある質問(FAQ)

Q. 舌磨きは毎日やってもいいですか?
A. 毎日でかまいません。基本は1日1回、朝起きたときに行いましょう。1日に何度も磨くと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。

Q. 舌磨きに歯磨き粉を使ってもいいですか?
A. 使わなくて大丈夫です。水でぬらしたブラシだけで舌苔は落とせます。泡が立たないぶん、汚れが取れているかをブラシの先で確認しやすくなります。

Q. 舌の白いのは全部取ったほうがいいですか?
A. いいえ。舌苔は健康な人にもみられ、つく量には個人差があります。完全に取り切ろうとすると磨きすぎになるため、「厚くたまった分を減らす」イメージで十分です。

Q. 舌磨きの効果はどれくらいで感じられますか?
A. 舌苔の量はその場で減りますが、口臭の感じ方には個人差があります。舌苔のつきやすさは口の乾燥にも左右されるため、毎朝の習慣として続けることが大切です。

Q. 舌磨きをしても口臭が気になるときは?
A. 歯周病や口の乾燥など、舌苔以外の原因が隠れている可能性があります。自分で判断せず、一度歯科医院で相談してみてください。

まとめ:舌磨きは「やさしく・1日1回」が正解

舌磨きのポイントを伝える歯科医師

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • 口臭の大部分は口の中が原因で、その中心は舌苔と歯周病
  • 舌苔が主な原因の「生理的口臭」には、舌磨きによる舌苔の除去が効果的とされている
  • 歯周病などが原因の「病的口臭」は、舌磨きだけでは改善しない
  • やり方は「鏡を見て、奥から手前へ、やさしく一方向」
  • 頻度は1日1回・朝起きたときが基本。磨きすぎは粘膜を傷つける
  • 道具は専用の舌ブラシがおすすめ。歯磨き粉は不要
  • それでも取れない・すぐつくときは、口の乾燥や歯周病もチェック

舌磨きは、今日から始められる手軽なセルフケアです。がんばりすぎず、「やさしく・1日1回」を毎朝の習慣にしてみてください。歯磨きの仕方もあわせて見直したい方は、正しい歯磨きの方法の記事も参考にどうぞ。

参考文献・出典

予防・セルフケア
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この記事を書いた人
しょう

現役歯科医師(臨床経験10年以上)。むし歯・歯周病の治療から、ジルコニア・セラミックなど自費の補綴治療まで幅広く診療しています。「もっと早く知っていれば」を減らせるよう、診療室で患者さんに話すような内容を、臨床経験と公的機関・学会の情報をもとにわかりやすく発信しています。

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