ズキズキ痛む、冷たいものがしみる、噛むと響く——ひとことで「歯が痛い」といっても、痛み方は人それぞれです。じつは、この「痛み方」こそが、原因を見分ける大きなヒントになります。
歯の痛みの原因は虫歯だけではありません。歯周病や親知らず、なかには「歯に原因がない痛み」まであります。
この記事では、現役歯科医師の自分が、痛み方別に考えられる原因と、今すぐできる応急処置・受診の目安をわかりやすく解説します。
歯が痛い原因は?痛み方から見当をつけよう

歯の痛みは「どんなときに・どんなふうに痛むか」で、原因のおおよその見当をつけられます。まずは下の早見表で、自分の痛みに近いものを探してみてください。
| 痛み方 | 考えられる主な原因 | くわしい解説 |
|---|---|---|
| 何もしなくてもズキズキ痛む | 進行した虫歯(歯髄炎)/歯の根の先の膿(根尖性歯周炎) | この記事で解説 |
| 冷たいもの・甘いものがしみる | 知覚過敏/虫歯 | 知覚過敏の原因と治し方 |
| 噛んだときだけ痛い | 歯根膜の炎症/歯のひび/歯ぎしり | 噛むと歯が痛い原因と対処法 |
| 歯ぐきが腫れて痛い | 歯周病/親知らずまわりの炎症 | 歯周病の初期症状/親知らずは抜くべき? |
| 歯に異常がないのに痛い | 筋肉・神経・鼻・心臓など(非歯原性歯痛) | この記事で解説 |
それぞれの痛みについて、ここから順番に解説します。気になる章だけ読んでも分かるようにまとめています。

じつは「どの歯が痛いか」は、本人にも正確には分からないことが多いんだ。上の歯が原因なのに下の歯が痛く感じることもあるくらいでね。だから痛み方はあくまでヒントにして、最後は問診や口の中の診察、温度検査、レントゲンなどを組み合わせて確かめるのが大切なんだ。
ズキズキ痛む・何もしなくても痛いときの原因は?

何もしていないのにズキズキ痛む場合、代表的な原因は「歯髄炎(しずいえん)」と「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」の2つです。どちらも自然には治らず、歯科医院での治療が必要になります。
虫歯が神経まで進んだ痛み(歯髄炎)
歯髄炎とは、虫歯が進行して歯の中の神経(歯髄)まで細菌が達し、炎症を起こした状態のことです。痛み方は段階的に変わっていきます。
- 初期:冷たいものがしみる。普段はほとんど症状がない
- 進行すると:何もしなくても痛むようになる
- さらに進むと:温かいもので痛む。脈打つようなズキズキした痛みになる
「熱いものがしみる・痛い」は、歯の神経の炎症が進んでいる可能性があるサインです。炎症が元に戻らない段階(不可逆性歯髄炎)と診断された場合は、神経を取る治療(根管治療)が必要になることがあります。治療の流れは神経を取る治療の解説記事にまとめています。
歯の根の先に膿がたまる痛み(根尖性歯周炎)
根尖性歯周炎とは、歯の内部から広がった細菌の感染などによって、歯の根の先の組織に炎症が起きた状態のことです。膿がたまることもあります。神経が死んだ歯だけでなく、根の治療をした歯が再び感染して起こることもあります。次のような症状が特徴です。
- 歯が浮いたような感じがする
- 食べ物を噛んだときに響いて痛む
- ドクドクと脈打つような痛みがある
- 歯の根元の歯ぐきが赤く腫れる
重症になると、顔が腫れたり発熱したりすることもあります。ここまで進む前に、早めの受診が大切です。
冷たいもの・甘いものがしみるときの原因は?

冷たいものや甘いものが一瞬しみる場合、まず考えられるのは知覚過敏です。ただし、ある程度進行した虫歯でも同じようにしみるため、自分で見分けるのは簡単ではありません。
知覚過敏とは、虫歯や神経の炎症がないのに、冷たい飲食物や歯ブラシの毛先などの刺激で一時的な痛みを感じる状態のことです。痛みが長くても1分以内におさまるのが特徴です。
- 一瞬しみて、すぐおさまる → 知覚過敏の可能性
- 痛みが続く・熱いものでも痛む → 虫歯や神経の炎症の可能性
しみる原因とセルフケアの方法は、知覚過敏の解説記事で詳しく紹介しています。

「しみるだけだから知覚過敏だろう」と様子を見ているうちに、虫歯が神経の近くまで進んでいた…というケースは珍しくないんだ。しみ方が強くなってきた、痛む時間が長くなってきた、というときは早めに診てもらってほしいな。
噛むと痛い・特定の歯だけ痛いときの原因は?
噛んだときだけ痛む場合は、歯の根のまわりにある「歯根膜(しこんまく)」というクッションの炎症が関係していることが多いです。原因としては、次のようなものがあります。
- 歯周病で歯を支える組織が炎症を起こしている
- 神経が死んだ歯・神経を取った歯の根の先に炎症がある
- 歯にひびが入っている・割れている
- 噛み合わせや歯ぎしりで特定の歯に負担がかかっている
それぞれの見分け方と対処法は、噛むと歯が痛いときの解説記事で詳しくまとめています。朝起きたときのあごの疲れなど、歯ぎしりの心当たりがある方は歯ぎしりの原因の記事も参考にしてください。
歯ぐきや奥のほうが痛いときの原因は?

歯そのものではなく歯ぐきが痛む場合は、歯周病か、親知らずまわりの炎症が代表的です。
歯周病による痛み
歯周病とは、歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)から入った細菌が歯ぐきに炎症を起こし、進行すると歯を支える骨まで溶かしてしまう病気のことです。初期はほとんど痛みがありませんが、進行すると歯ぐきの腫れや、噛んだときの痛み・歯のぐらつきが出てくることがあります。
歯ぐきからの出血など、早めに気づくためのサインは歯周病の初期症状の記事で解説しています。
親知らずまわりの炎症(智歯周囲炎)
智歯周囲炎(ちししゅういえん)とは、親知らずが中途半端に生えて歯ぐきがかぶったままになり、そこに細菌がたまって炎症を起こした状態のことです。20歳前後の方に多くみられます。
悪化すると、顔が腫れたり口が開きにくくなったりすることもあります。親知らずを抜くべきかどうかの判断基準は、親知らずの解説記事にまとめています。
虫歯じゃないのに歯が痛いのはなぜ?

歯を調べても原因が見つからないのに、歯が痛むことがあります。これを「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」といいます。非歯原性歯痛とは、歯には原因がない歯痛のことです。
日本歯科医師会のサイトでは、筋肉・神経・鼻・心臓など8つの原因に分類されています。ここでは代表的なものを紹介します。
筋肉やあごが原因の痛み(筋・筋膜性歯痛)
非歯原性歯痛のなかでも代表的なのが筋・筋膜性歯痛で、簡単にいうと「筋肉痛からくる歯痛」です。あごを動かす筋肉の慢性的な疲れやこりが、主に奥歯の漠然とした鈍い痛みとして感じられます。
あごの痛みや口の開けにくさをともなう場合は、顎関節症が関係していることもあります。詳しくは顎関節症の解説記事をご覧ください。
鼻や全身の病気が原因の痛み
上の奥歯の上には「上顎洞(じょうがくどう)」という骨の中の空洞があります。風邪や副鼻腔炎でここが炎症を起こすと、上の奥歯の痛みとして感じることがあります(上顎洞性歯痛)。この場合の治療は歯科ではなく耳鼻咽喉科の担当です。
また、狭心症や心筋梗塞など心臓の病気に関連して歯が痛む例も報告されています。歩行や運動のたびに歯が痛む場合は、心臓の検査が必要なことがあるため、早急に医科を受診してください。
非歯原性歯痛は「歯を治療しても良くならない痛み」です。歯を削る・神経を取る・抜くといった治療は元に戻せません。「歯に異常はない」と言われたときは、原因に応じた診療科で評価を受けることが大切です。

非歯原性歯痛で怖いのは、原因ではない歯を削ったり抜いたりしてしまうことなんだ。削った歯は元に戻らないからね。「歯に異常はありません」と言われたら、それは大事な診断結果。そこから原因に合った診療科につながっていくのが大事なんだ。
歯が痛いときの応急処置は?

すぐに受診できないときは、次の応急処置で痛みをやわらげましょう。ただし応急処置はあくまで一時しのぎで、痛み止めだけで治ることはありません。
今すぐできる対処法
- できるだけ痛むほうで噛まず、患部を清潔にする
- つらいときは市販の痛み止めを使う(説明書を守って使い、持病・妊娠中・服用中の薬・アレルギーがある方は薬剤師などに確認する)
- 腫れて熱を持っているときは、冷やすと楽になる
- 冷たいものがひどくしみるときは、ぬるま湯で口をゆすぐ
- 熱いものだけがしみるときは、冷たい水を口に含むと痛みがやわらぐ
やってはいけないこと
- 長風呂・飲酒・激しい運動(体が温まって血流が増えると、痛みが強くなりやすい)
- 患部を指や舌でさわる・刺激する
- 痛みが引いたからといって、そのまま放置する

応急処置で痛みがやわらぐと、つい受診を先延ばしにしたくなるよね。でも神経が死んで痛みが消えただけのこともあって、その場合は気づかないうちに炎症が根の先へ進んでいくんだ。痛みが引いた今のうちに受診しておくのが、結果的にいちばん楽だと思うよ。
すぐに受診すべきサインは?
歯の痛みには「できるだけ早く歯科を受診したほうがよいサイン」と、「救急の対応を検討すべきサイン」があります。特に後者は、放っておくと呼吸などに影響することがあるため、様子を見ないでください。
できるだけ早く歯科を受診したいサイン
- 顔やあごまで腫れている
- 発熱をともなっている
- 口が開きにくい
- 眠れないほど痛い
- 痛みが数日続いている・くり返している
救急の受診を検討すべきサイン
- 息苦しい
- 唾液や食べ物を飲み込みにくい
- 口の中や口の底が大きく腫れている
- 目の周りまで腫れが広がっている
- 腫れが急速に広がっている
夜間や休日に痛みが強いときは、各地域の歯科医師会が案内している休日・夜間の歯科診療窓口が利用できます。また、歩行や運動のたびに歯が痛むときは心臓の病気の可能性があるため、歯科ではなく医科(内科・循環器科)を早急に受診してください。
歯の痛みに関するよくある質問
Q. 虫歯がないと言われたのに歯が痛いのはなぜですか?
A. 歯に原因がない「非歯原性歯痛」の可能性があります。あごの筋肉のこり・神経・副鼻腔の炎症・心臓の病気など原因はさまざまで、歯を治療しても良くなりません。原因に応じて耳鼻咽喉科や医科などが担当になります。
Q. 歯の痛みが自然に治まったら、受診しなくてもいいですか?
A. 受診をおすすめします。神経が死んで痛みを感じなくなっただけのことがあり、その場合は放置すると根の先に炎症が広がる根尖性歯周炎へ進むことがあります。痛みが引いても原因が残っていることがあるため、症状が落ち着いているうちに検査を受けておくと安心です。
Q. 市販の痛み止めが効かないときはどうすればいいですか?
A. 痛み止めが効かないのは、歯髄炎や根の先の炎症など、歯科での処置が必要なサインのことがあります。抗菌薬(化膿止め)が必要かどうかは、腫れの広がりや発熱などを確認したうえで歯科医師が判断します。自己判断で抗菌薬を使わず、早めに受診してください。
Q. お風呂に入ると歯の痛みが強くなるのはなぜですか?
A. 体が温まって血流が増えると、神経の炎症による痛みは強くなりやすいためです。歯髄炎では入浴後に痛みが増すことが知られています。痛みが強い日は、長風呂を避けて短めのシャワーにしておくと安心です。
Q. 歯が痛いとき、何科を受診すればいいですか?
A. まずは歯科医院で大丈夫です。虫歯・歯周病など歯が原因の痛みは歯科で治療できます。検査で歯に原因が見つからない場合は、症状に応じて耳鼻咽喉科・内科・頭痛の専門外来などを案内してもらえます。
Q. 痛くはないけれど「歯が浮いた感じ」があります。放置していいですか?
A. 歯が浮いた感じは、歯の根のまわりの組織(歯根膜)の炎症や、根の先に膿がたまり始めているサインのことがあります。痛みがなくても炎症が進んでいることがあり、放置すると腫れや強い痛みに変わることもあります。
まとめ:痛み方は原因を知る手がかり

歯の痛みは、痛み方から原因のおおよその見当をつけられます。最後に要点をまとめます。
- 何もしなくてもズキズキ痛む → 歯髄炎・根尖性歯周炎の可能性。早めの治療が必要
- 一瞬しみるだけ → 知覚過敏の可能性。ただし虫歯との自己判断は難しい
- 噛むと痛い → 歯根膜の炎症。ひびや歯ぎしりが隠れていることも
- 歯に原因がない痛み(非歯原性歯痛)もある。歯を削る前に正しい診断を
- 応急処置は一時しのぎ。痛みが消えても原因は残っている
痛みは体からの大事なサインです。原因が分かれば、多くの場合は適切な治療で対処できます。がまんせず、早めにかかりつけの歯科医院で相談してみてください。ふだんから定期検診を受けておくと、痛みが出る前の段階で見つけられることも多いですよ。


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