「歯石取りって痛いの?」「何回も通うのはなぜ?」——歯石取りをすすめられても、内容がわからず不安に感じる方は少なくありません。忙しいと、つい先延ばしにしてしまいますよね。
この記事では、歯石取り(スケーリング)で実際に何をするのか、痛みや出血の理由、頻度・費用の目安、自分で取るのが危険な理由までを、現役の歯科医師がやさしく解説します。あわせて毎日の正しい歯磨きの方法を知っておくと、歯石をためにくいお口づくりに役立ちます。
歯石取り(スケーリング)とは?何をするのか

歯石取り(スケーリング)とは、歯に付いた歯石を、専用の器具で機械的に取り除く処置のことです。歯石は歯磨きでは落とせないため、歯科医院で除去する必要があります。
歯石の表面はプラーク(細菌)が付きやすく、歯ぐきの炎症や歯周病リスク、口臭につながることがあります。歯石取りは、そうしたトラブルを防ぐための、予防の基本となるケアです。
歯垢と歯石はどう違う?なぜ歯磨きでは取れないのか
歯垢(プラーク)とは細菌のかたまりで、歯石とはその歯垢が固まって石のように硬くなったものです。やわらかい歯垢は歯磨きで落とせますが、一度固まった歯石は歯ブラシでは取れません。
歯垢は細菌が集まった粘着性のあるかたまりで、うがいだけでは十分に取り除けません。そのため、歯ブラシや歯間清掃用具で物理的に落とすことが大切です。さらに硬い歯石になると、こびりついて自分では除去できないため、スケーラーという専用器具で取り除きます。
スケーリング・SRP・PMTCの違いは?

結論として、この3つは「取る場所」と「目的」が違います。名前が似ていて混同しやすいので、下表で整理します。
| 処置 | 取る場所 | 目的・特徴 |
|---|---|---|
| スケーリング | 歯ぐきの上(見えている部分) | 歯石・歯垢を除去。超音波などで効率よく取る。 |
| SRP(ルートプレーニング) | 歯ぐきの中(歯周ポケット内の歯根面) | 深いところの歯石・汚れを取り、根の表面をなめらかにする。歯周病が進んだ場合に行う。 |
| PMTC | すべての歯の面 | 歯科医師・歯科衛生士などの専門家が、専用機器を使って歯面のプラーク・着色・歯石などを清掃・研磨する専門的なクリーニング。虫歯・歯周病になりにくい環境を整える。 |
かんたんに言うと、スケーリングは主に歯の表面や歯ぐきの近くに付いた歯石を取る処置、SRPは歯周ポケット内の歯根面に付いた歯石や汚れを取り除いて根の表面を整える処置、PMTCは専門家による歯面のクリーニング、というイメージです。歯ぐきの状態によって、どこまで行うかが変わります。
歯石取りは何をする?当日の流れと使う器具

歯石取りは、お口の検査 → 歯石の除去 → 仕上げという流れで進みます。使う器具にもいくつか種類があります。
当日の流れ(検査→歯石除去→仕上げ)
まず、歯ぐきの状態(歯周ポケットの深さや出血の有無)を検査します。そのうえで歯石を除去し、最後に歯の表面をなめらかに整えます。歯石の付き具合や歯ぐきの状態によっては、一度で終わらず複数回に分けることがあります(理由は後述します)。
使う器具(超音波スケーラー・手用スケーラー)
歯石除去には、主に超音波スケーラーと手用スケーラーを使い分けます。超音波スケーラーは、超音波の振動で歯石を細かく砕きながら水で洗い流すため、量の多い歯石も短時間で効率よく除去できます。細かい部分や仕上げには、手用のスケーラーを使います。歯面をなめらかにする仕上げでは、フッ化物入りのペーストと回転式の器具を使うこともあります。
歯石取りは痛い?
結論として、痛みには個人差があります。歯ぐきの炎症が少ない方では強い痛みを感じにくいことが多いですが、歯ぐきに炎症がある人ほど、しみたり痛みを感じたりしやすい傾向があります。知覚過敏や歯石の付き方によっても、感じ方は変わります。
痛みが出やすいのはどんな人?
歯ぐきが腫れている人、歯周ポケットが深い人、歯石が多くこびりついている人は、処置中に痛みや違和感を覚えやすくなります。歯ぐきの中の深い歯石を取るSRPでは、必要に応じて麻酔を使うこともあります。
出血するのはなぜ?(歯ぐきからのサイン)
歯石取りのときに出血する場合、多くは歯ぐきに炎症があり、軽い刺激でも出血しやすい状態になっていることが理由です。歯石除去とセルフケアの改善によって、歯ぐきの炎症や出血が落ち着くことがあります。ただし、歯周病の進行度によっては、継続的な治療やメンテナンスが必要になります。

「歯石取りが痛かった」という人は、じつは歯ぐきに炎症があることが多いんだ。健康な歯ぐきなら、ほとんど痛くないよ。痛みや出血がある人こそ、続けて通うとだんだんラクになっていくんだ。
なぜ一度で終わらないの?回数と再検査の理由

歯石取りが数回に分かれるのは、歯ぐきの状態を確かめながら段階的に進める必要があるからです。歯周病治療では、検査結果や歯ぐきの反応を確認しながら、段階的に処置を進めることがあります。
一般的には、まず全体の検査と見えている歯石の除去を行い、歯ぐきが落ち着いた頃に再検査をします。そこで深いところに歯石が残っていれば、次の段階(SRPなど)に進みます。歯ぐきの変化を確認しながら進めることで、歯周病の状態に合わせた管理がしやすくなります。お口の状態が良い人は少ない回数で済み、歯石や炎症が多い人ほど回数が増える、と考えるとわかりやすいでしょう。

何回か通ううちに「もう大丈夫かな」と来なくなる人がいるんだ。でも歯ぐきの中の歯石が残ったままだと、また元に戻ってしまうよ。せっかくの一歩だから、途中でやめず、必要な処置と再評価まで受けてほしいな。
歯石取りはどのくらいの頻度で受ける?
結論として、頻度は一律ではなく、お口の状態(歯周病のリスク)に応じて歯科医院が決めます。汚れや歯石が付きやすい人ほど、間隔を短くするのが基本です。
頻度の考え方
歯石取りは「一度受けたら終わり」ではなく、定期的なメンテナンスとして続けるのが基本です。歯周病は再発しやすいため、治療後も定期的に歯石を取り、状態をチェックすることが大切です。適切な間隔は、歯周病のリスクや清掃状態、歯ぐきの反応によって一人ひとり異なるため、検査のうえで歯科医院に提案してもらうのが確実です。
間隔を短くした方がいい人(リスクが高い人)
次のような人は、間隔を短めにした方がよいことがあります。歯石や歯周病が進みやすいためです。
- 歯ぐきから出血しやすい、歯周ポケットが深い
- 歯石が付きやすい(すぐにザラつきを感じる)
- 喫煙習慣がある、糖尿病がある
- 被せ物・ブリッジなどが多く、清掃が難しい部分がある
自分に合った間隔は、検査のうえで歯科医師に相談すると提案してもらえます。
歯石取りの費用はどのくらい?
結論として、費用は受け方によって変わります。歯周病の検査・診断を行い、その一環として歯石を取る場合は保険診療の対象になります。自己負担割合(1〜3割など)に応じた費用がかかりますが、正確な金額は検査内容・処置範囲・回数によって変わるため、受診先で確認してください。
保険で受ける場合
歯周病の検査と一体で行う歯石取りは、保険が使えます。保険診療での費用は、主に次のような要素で変わります。
- 初診か再診か
- 歯周病検査の内容
- 歯石を取る範囲
- SRPなど追加処置の有無
- 自己負担割合(1〜3割など)
これらによって、同じ歯石取りでも金額は変わります。
自費(PMTCなど)で受ける場合
着色除去や審美目的、疾病治療とは別に行うクリーニング(PMTCなど)は、自費診療となる場合があります。費用は医院によって異なります。保険診療の歯周病治療として行う処置とは、目的や内容が異なります。
| 受け方 | 費用の考え方 | 備考 |
|---|---|---|
| 保険での歯石取り(歯周病治療の一環) | 保険適用(自己負担割合に応じた費用) | 検査とセット。検査内容・範囲・回数・負担割合で変動 |
| 自費のクリーニング(PMTC等) | 医院により異なる | 着色除去・美容/予防目的 |
自分で歯石を取るのは危険?市販グッズの注意

結論として、自分で歯石を取るのはおすすめできません。市販の歯石取り器具(スケーラー)も売られていますが、歯ぐきや歯を傷つけるリスクがあります。
歯石は歯ぐきの際や歯の間など、見えにくく届きにくい場所に付きます。とくに下の前歯の裏側や奥歯の外側は歯石がたまりやすい代表的な場所です。鏡を見ながら自分で尖った器具を使うと、歯ぐきを切ってしまったり、歯の表面に傷をつけてしまうおそれがあります。傷ついた面にはかえって歯垢が付きやすくなります。取れたように見えても、歯ぐきの中の歯石は残るため、根本的な解決にはなりません。歯石取りは、無理をせず歯科医院にまかせるのが安全です。

表面の見える歯石が少し取れても、大事な歯ぐきの中は取れないんだ。ケガのもとになるから、そこはプロにまかせてね。
歯石取りのあとに気をつけること
歯石取りのあとは、一時的にしみたり、歯ぐきが敏感になったりすることがあります。多くは数日〜数週間で落ち着きますが、強い痛み・出血・しみる症状が続く場合は歯科医院に相談しましょう。
しみる(知覚過敏)ことがある
歯石が付いていた部分は、これまで歯石で覆われていた歯の根元が現れるため、一時的に冷たいものがしみることがあります。多くは徐々に落ち着きます。しみが続く場合は、知覚過敏用の歯磨き粉を使うのも一つの方法です。
歯がスカスカ・削れた気がするのはなぜ?
歯石取りのあとに「歯と歯の間に隙間ができた」「歯が削れたのでは」と感じる方がいますが、多くは歯を削ったのではなく、歯石や腫れた歯ぐきで隠れていた部分が見えるようになったためです。歯石が厚く付いていた場所ほど、取れたあとにすき間を感じやすくなります。多くは一時的な違和感で、しだいに気にならなくなることがほとんどです。
出血・食事・セルフケアの注意
処置後に少し出血したり、歯ぐきがムズがゆく感じたりすることがありますが、通常は問題ありません。当日は刺激の強い食べ物を控えると安心です。そして何より大切なのは、毎日の歯磨きで歯石をためないこと。歯石取りはあくまでリセットで、その状態を保つのは日々のセルフケアです。歯と歯の間はフロスや歯間ブラシも使いましょう。

歯石を取るとお口がスッキリして、つい安心してしまうよね。でも本当のスタートはそこから。きれいな状態を保てるかは、毎日の歯磨き次第なんだ。取った直後こそ、ていねいなケアを続けてみてね。
歯石取りの不安・症状と、その理由・対応
歯石取りでよくある不安や症状を、理由と対応の目安とあわせて整理します。
| 不安・症状 | よくある理由 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 痛い | 歯ぐきの炎症、知覚過敏、歯石が多い | 痛みが強いときは伝える。必要に応じて麻酔 |
| 出血する | 炎症で歯ぐきが出血しやすい状態 | セルフケアを継続。続く場合は再相談 |
| しみる | 歯根面が一時的に露出して敏感になる | 知覚過敏用歯磨剤。続く場合は受診 |
| 歯がスカスカする | 歯石や腫れが取れて隙間を感じる | 多くは一時的な違和感。気になる場合は確認 |
| 何回も通う | 検査・再評価をしながら段階的に進める | 途中で中断しない |
よくある質問(FAQ)
Q. 歯石取りは痛いですか?
歯ぐきが健康な方はほとんど痛みを感じません。一方で、歯ぐきに炎症がある方や歯石が多い方は、しみたり痛みを感じたりしやすい傾向があります。歯ぐきの中の深い歯石を取る場合は、必要に応じて麻酔を使うこともあります。痛みが不安なときは、遠慮なく歯科医師に伝えてください。
Q. どうして一度で全部取ってくれないのですか?
歯ぐきの状態を確かめながら段階的に進める必要があるためです。まず検査と見えている歯石の除去を行い、歯ぐきが落ち着いた頃に再検査をして、深いところに歯石が残っていれば次の処置に進みます。お口の状態が良い方は少ない回数で済みます。
Q. 歯石取りの費用はどのくらいですか?
歯周病の検査と一体で行う歯石取りは保険が使え、自己負担割合(1〜3割など)に応じた費用がかかります。回数やお口の状態、検査・処置の範囲によって金額は変わります。着色除去などを目的とした自費のクリーニングは、医院によって費用が異なります。正確な金額は受診先にご確認ください。
Q. 歯石は自分で取ってもいいですか?
おすすめできません。市販の器具で歯ぐきや歯を傷つけるおそれがあり、歯ぐきの中の歯石は自分では取れません。歯石取りは歯科医院にまかせるのが安全です。
Q. 歯石取りはどのくらいの頻度で受ければいいですか?
お口の状態によって異なり、歯周病のリスクや清掃状態に応じて歯科医院が決めます。歯周病は再発しやすいため、治療後も定期的なメンテナンスとして続けるのが基本です。歯石が付きやすい方やリスクが高い方は、より短い間隔がすすめられる場合があります。
Q. 歯石取りのあとにしみるのはなぜですか?
歯石で覆われていた歯の根元が現れることで、一時的に冷たいものがしみることがあります。多くは数日〜数週間で落ち着きます。しみが続く場合は、知覚過敏用の歯磨き粉の使用や、歯科医院への相談を検討しましょう。
Q. 歯石取りで歯が削れたり、スカスカしたりしませんか?
歯石取りは歯石を取り除く処置で、健康な歯そのものを削るものではありません。「スカスカした」と感じるのは、多くの場合、歯石や腫れた歯ぐきで隠れていた部分が見えるようになったためです。多くは一時的な違和感ですが、強い違和感が続く場合は歯科医院で確認しましょう。
Q. 歯石取りをすると歯は白くなりますか?ホワイトニングとは違いますか?
歯石取りやクリーニングで、歯の表面に付いた着色(茶渋・ヤニなど)が落ちて、本来の歯の色に近づくことはあります。ただし、歯そのものを白くするホワイトニングとは目的が異なります。歯の色味自体を明るくしたい場合は、ホワイトニングという別のメニューになります。
まとめ|歯石取りは“予防のメンテナンス”

歯石取り(スケーリング)は、歯磨きでは取れない歯石を取り除き、プラークが付きにくい環境を整えるためのケアです。痛みや出血は歯ぐきの炎症や知覚過敏などのサインであることがあり、歯石除去やセルフケアの改善で落ち着く場合もありますが、症状が続く場合は歯科医院で確認しましょう。数回に分かれるのも、歯ぐきの状態に合わせて進めるための大切なステップです。
そして、歯石取りでリセットした状態を保つのは、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスです。自分で無理に取ろうとせず、正しい歯磨き+定期的な歯科でのケアを組み合わせていきましょう。「最近歯石取りをしていないな」と感じたら、それが受け時のサインです。
参考文献・出典
- e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム/厚生労働省)「PMTC(歯石除去・歯面清掃)」(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-009.html)
- e-ヘルスネット「歯周病の予防と治療」(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-006.html)
- 日本歯科医学会「歯周病の治療に関する基本的な考え方」(令和2年)(https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r02/document-200401-1.pdf)
- 日本歯科医師会 テーマパーク8020「歯周病」(https://www.jda.or.jp/park/trouble/index_04.html)


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